2025年1月15日
『前から血便が出てましたが少しだったのでしばらく様子をみてました』
『痔があるので血便は放置してました』
『イチゴジャムのような血便がでました』
問診ではそんな血便のお話をよく受けます。
血便が出た際の対処と原因について理解しておくことは非常に重要です。実際のところ、どのタイミングで病院を受診したらいいのか解説致します。
1. 血便はどの位でるとマズイのか
血便が出た場合、たとえ少量であっても大腸内視鏡検査を検討するのが一般的です。特に大量に血便が出る場合には、速やかに医療機関を受診することが必要です。
1.1. 一般的にHb7.0g/dl以下が輸血の目安
一般的に、ヘモグロビン(Hb)の値が7.0g/dl以下になると、輸血が必要とされます。これは血液の酸素運搬能力が著しく低下し、体に大きな負担がかかるためです。
特に心臓に問題がある方や高齢者の場合、Hbが8.0g/dl以下でも輸血が検討されることがあります。
いずれにしても、医師の判断が重要となりますので、出血が続く場合や貧血がある場合などは定期的な血液検査でヘモグロビンの値を把握しておくことが大切です。
1.2. 大量出血は緊急入院
直近の採血結果でヘモグロビン(Hb)が正常範囲内であっても、大量に血便が出る場合には注意が必要です。
大量の目安としては、一時間以内に複数回の血便(便器が真っ赤になるレベル)です。
特に大量出血が続く場合には、酸素供給が十分に行われず、意識障害やショック状態に陥る危険性があります。
1.3. 大腸癌が原因で貧血が進む場合あり
肉眼で確認できる血便がなくても、便中に潜在的な血液が含まれている場合があります。これは主に大腸癌やポリープなどが原因で、便潜血検査で発見されることが多いです。
潜血が進行し、長期間にわたって見過ごされると、体内の鉄分が消耗し、貧血が進行する可能性があります。貧血が進むことで、体がだるくなったり、息切れが起きやすくなります。
特に自覚症状が出にくい場合が多いので、健康診断を欠かさず受けることが大切です。早期発見・早期治療が、健康を守る重要な鍵となります。
2. 血便の原因となる主な疾患
血便は、消化管からの出血が原因で起こることがあります。主な疾患としては、痔核や裂肛、さらには大腸がんや大腸ポリープなどが挙げられます。
2.1. 痔核・裂肛
痔核は、肛門周辺の静脈が拡張してできる血管の塊です。排便時の刺激などで出血が起こりやすくなります。一方、裂肛は肛門の皮膚が裂けて出血する状態を指します。この二つの症状は頻度の多い疾患ではありますが日常生活に大きな影響を及ぼします。治療としては、便通を整えることが重要です。食事や生活習慣の改善が効果的です。場合によっては外科的治療が必要です。
2.2. 血便の原因としての大腸がん
大腸がんは、消化管の中で最も多い悪性腫瘍です。その症状として血便が見られることがあります。他の症状には、腹痛や体重減少、便の形状の変化が含まれます。ただし、症状が出る前の早期発見が治療成功の鍵となります。そのため定期的な健康診断や大腸内視鏡検査が有効です。
2.3. 大腸ポリープによる血便
大腸ポリープは、大腸内壁にできる小さな隆起物のことです。ポリープが大きくなると出血しやすくなり、血便の原因となります。大腸ポリープの多くは良性ですが、放置すると悪性化する恐れがあります。内視鏡を用いたポリープの切除術が一般的な治療法です。ポリープが見つかった場合、早期に対処することが重要です。
2.4. 血便とIBDの関係
IBD(炎症性腸疾患)は、クローン病や潰瘍性大腸炎を含む長期間続く消化管の炎症です。これらの疾患は、血便の主な原因の一つです。IBDの症状には、腹痛や下痢、体重減少が含まれます。これらの症状がある場合、早期診断が必要となります。治療は、炎症を抑える薬物療法が中心です。IBDは、慢性的な疾患であるため、専門医による継続的な管理が重要です。血便がある場合は、迅速に医師に相談することが必要です。
2.5. 憩室出血
憩室出血とは、大腸壁の一部が袋状に膨らむ憩室が破れて出血する状態を指します。憩室は通常無症状ですが、出血すると突然の多量の排便や血便が見られます。原因は便秘や加齢による腸管壁の弱化が考えられます。治療は内視鏡での止血や薬物療法が主流です。憩室出血が繰り返される場合、外科的手術が必要になることもあります。日常生活では食物繊維を多く摂ることで予防が可能です。
2.6. 虚血性腸炎
虚血性腸炎は、大腸の一部が一時的に血流不足になることで炎症を起こす疾患です。高齢者に多く見られます。腹痛や血便が主な症状です。原因としては血管の動脈硬化や腸管のねじれが挙げられます。軽度の場合は安静にしていれば自然に治ることが多いです。しかし、重症例では入院や点滴が必要です。予防には食生活の改善が重要です。バランスの取れた食事や適度な運動が効果的です。
2.7. 感染性腸炎
感染性腸炎は、細菌やウイルスなどが腸に感染して炎症を引き起こす疾患です。カンピロバクターやサルモネラなどが原因となることが多いです。また、赤痢アメーバという、イチゴジャム状の血便が出る感染症もあります。症状は腹痛や下痢、血便などです。汚染された食品や水を摂取することで感染します。治療は抗菌薬が主ですが、安静と十分な水分補給も重要です。感染を予防するには、手洗いや食品の適切な調理が欠かせません。
2.8. その他の血便
薬剤性腸炎は、特定の薬物が腸の粘膜を傷つけることで起こる炎症です。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗生物質が原因となることが多いです。血便や腹痛が主な症状です。これらの症状が現れた場合、原因となる薬の中断が必要です。他にも、腫瘍や悪性リンパ腫、腸の血管異常などが血便の原因となることがあります。いずれの場合も、専門医による診断が重要です。適切な診断と治療を受けることで早期回復が期待できます。
3. 血便の診断に必要な検査方法
血便の診断には、いくつかの検査方法があります。まず、内視鏡検査(大腸カメラ)があります。次に、便潜血検査も重要です。また、血液検査を行うことで、身体の全体的な健康状態を把握する助けになります。
3.1. 内視鏡検査(大腸カメラ)の重要性
内視鏡検査は、血便診断において非常に重要な検査です。この方法では、直接大腸の内部を見ることができるため、ポリープや腫瘍などの異常を正確に把握できます。検査中は、カメラ付きの細いチューブを大腸の中に挿入し、リアルタイムで映像を確認します。これにより、微細な変化も見逃さずに検出することが可能です。
3.2. 便潜血検査のやり方と結果の見方
便潜血検査は、目に見えない少量の血液を便から検出するための簡単な検査です。まず、自宅で検体を取るためのキットを受け取ります。次に、便を専用の容器に取り、医療機関に提出して検査を行います。
結果が陽性の場合、消化管に出血がある可能性が高いです。ただし、陽性だからといって必ずしも重大な病気とは限りません。さらに詳しい検査が必要になります。便潜血検査は、特に大腸がんの早期発見に非常に有効です。
一方で、陰性でも絶対に安心とは言えません。例えば、出血が少量で検査に反応しない場合も考えられます。したがって、定期的な便潜血検査とともに、他の検査も並行して行うことが望ましいです。
3.3. 血液検査でわかること
血液検査は、血便の原因を特定するために重要な情報を提供します。この検査では、赤血球や白血球、血小板の数値を調べることで、貧血や炎症の有無を確認できます。また、血液中の成分を分析し、全身の健康状態も把握できます。
血液検査は、消化管出血が慢性化している場合にも有効です。例えば、持続的な出血があると貧血が進行しやすくなります。さらに、肝臓や腎臓の機能も血液検査で評価することが可能です。これにより、消化管以外の疾患も早期に発見することができます。
他にも、特定の疾患に関連するマーカーの値を調べることができます。これにより、疾病の存在や進行具合を詳細に知ることができます。したがって、血液検査は非常に多角的な診断方法であり、総合的な健康管理に欠かせない要素となります。定期的な検査を心掛けることで、健康維持に繋がります。
4. 血便の治療法と対策
血便が出た場合、その原因により治療法や対策が異なります。例えば、内視鏡検査や血液検査などで原因を特定し、それに基づいて治療を開始します。
4.1. 血便が出た場合に必要な治療
血便が出た場合、まずは原因を解明することが大切です。医師は内視鏡を使って腸内の状態を詳しく調べます。その結果、ポリープや潰瘍、出血箇所が見つかれば、その治療法を検討します。次に、血液検査も行います。これにより、貧血や炎症の有無を確認します。また、慢性的な病気が疑われる場合には、生検などの追加検査を実施することが多いです。
4.2. 医師が勧める治療法
医師が勧める治療法には、初期の段階での早期発見と適切な対応があります。血便の原因が内視鏡によるポリープであれば、その場で除去することが一般的です。出血が続く場合には止血処置を行います。
また、感染によるものならば、抗生物質が使用されます。薬の服用と同時に、食事の制限も指導されます。一般的には、飲酒も控えるように指示されます。
さらに、慢性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)の場合、長期的な薬物療法が必要になります。免疫抑制剤やステロイドといった薬が使用されることがあります。
4.3. 重症時の治療法と輸血の対応
血便が重症の場合、緊急の治療が必要です。特に大量の出血がある場合、輸血が行われることがあります。また、血液の凝固機能を調べて適切な凝固剤の投与が必要です。こうした処置を迅速に行うことで、出血を抑えることができるのです。
さらに、重症の場合は入院が必要です。病院での治療により、腸内の出血箇所を特定し、止血処置が行われます。内視鏡や手術による治療が検討されることもあります。また、輸血後には、慢性的な貧血の管理が重要です。定期的な血液検査を行い、必要に応じて鉄剤やビタミンの投与が行われます。
5. 貧血と血便の関連性
貧血と血便は深く関連している場合があります。特に持続的な血便が見られる場合は、早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
5.1. 血便による貧血の症状
血便が原因で貧血が生じると、さまざまな症状が現れます。まず、疲れやすさや息切れ、頭痛などがあります。これらの症状は鉄分不足による酸素供給の不足からきています。また、顔色が悪くなったり、手足が冷たく感じられます。さらに重症の場合は、動悸やめまい、集中力の低下もみられます。
5.2. 貧血が疑われる場合の検査
貧血が疑われる際には、いくつかの検査が行われます。まず、血液検査で赤血球やヘモグロビンの数値を確認します。これにより、貧血の程度がわかります。次に、フェリチンやトランスフェリンなどの鉄代謝に関する検査も実施されます。また、血便の原因を特定するために、内視鏡や便潜血検査が行われます。
5.3. 貧血改善のための治療法
貧血を改善するためには、いくつかの治療法があります。まず、食事療法が基本となります。鉄分を多く含む食品をバランスよく摂取することが重要です。次に、鉄分補給のための薬剤が処方されます。これにより、体内の鉄分不足が速やかに補われます。また、血便の原因となる腸内出血を治療するために、医療的な介入が行われる場合もあります。
6. 信頼される病院と医師の選び方
病院や医師を選ぶ際には、まず信頼性が重要です。信頼できる医師は、患者の悩みをしっかりと聞き、的確な診断と治療を行います。病院の評判や口コミも参考になりますが、実際に診察を受けてみて感じる信頼感も大切です。
6.1. 血便の診断と治療に強い病院
血便は消化器系の問題を示す重要なサインです。早期発見と適切な治療が必要となります。そのため、内視鏡の専門医がいる病院を選ぶことが重要です。診断では内視鏡検査やCTスキャンが用いられ、原因を具体的に特定します。適切な治療を受けることで、早期の健康回復が期待できます。
6.2. 専門医との相談のポイント
専門医に相談する際には、事前に自分の症状や疑問点を整理しておくと良いです。的確な情報提供が、医師からの適切なアドバイスに繋がります。また、聞きたいことや不安な点をリスト化して持参すると、相談がスムーズに進みます。医師とのコミュニケーションが円滑であれば、治療計画に対する理解も深まります。
6.3. 札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニックの紹介
当院は、アクセスの良い大通駅から徒歩30秒の好立地にあります。当クリニックでは、院内で下剤を使用する大腸カメラの検査が可能ですので、検査前の準備もスムーズに行えます。さらに、鎮静剤の使用が可能で、患者の負担を軽減する施策が整っています。専門医が在籍しており、消化器系のトラブルに対し的確な診断と治療を提供します。安心してご利用いただけるクリニックです。
7. 便潜血検査陽性だった場合
この検査は大腸内の異常を早期に発見するためのものであり、必ずしも大腸癌を意味するものではありません。病院で詳しい検査を受け、医師の指示に従うことが必要です。
7.1. 痔だと思っても大腸カメラを検討
便潜血検査が陽性となり、痔だと自己診断する場合でも大腸カメラを受けることを検討してみてください。痔は便潜血検査が陽性になる一因ですが、他の異常を見逃す可能性もあります。また、大腸カメラは大腸内部を直接観察できるため、正確な診断が可能です。そして、万が一、ポリープや腫瘍が見つかった場合には即座に治療が進められます。
7.2. 50歳以上は大腸癌リスクが上昇
50歳を過ぎると、大腸癌のリスクは大幅に上昇します。年齢とともに細胞の修復能力が低下し、異常な細胞が増えるためです。そのため、定期的な検査が重要です。特に、家族に大腸癌の経験者がいる場合には、リスクがさらに高まります。また、食生活や生活習慣も大腸癌のリスクに影響します。脂っこいものや高カロリーの食事を控え、バランスの良い食事を心がけましょう。
7.3. 大腸ポリープ切除により大腸癌予防
大腸ポリープは大腸粘膜にできる良性の腫瘍ですが、放置すると悪性化する危険があります。そのため、発見次第、取り除くことが推奨されます。大腸カメラを通じてポリープを早期に発見し、切除することで大腸癌の予防が可能です。また、ポリープ除去後も定期的な検査が必要です。再発のリスクを軽減するためです。早期発見と早期治療により、長期的な健康を維持することができます。定期的な検診を忘れずに受けましょう。
8. 大腸カメラに関するよくある質問と回答
大腸カメラの検査に関して、多くの人が疑問を抱くことが多いです。そのため、今回はよくある質問とその回答をまとめました。大腸カメラの検査を受ける際の不安や悩みを軽減するために、具体的な情報を提供しています。
8.1. 鎮静剤使用でできますか
大腸カメラの検査時に、鎮静剤を使用することは可能です。多くの患者さんが、検査中の不快感を減らすために鎮静剤を希望します。鎮静剤を使用することで、ほとんどの人がリラックスして検査を受けることができます。
しかし、鎮静剤を使用することで、一時的に意識がもうろうとするため、検査後の運転や重機の操作は控える必要があります。
鎮静剤の使用は、医療スタッフの監督のもとで行われますので、安全性は確保されています。検査前には、自分の体質や過去の病歴を医師に詳しく伝えることが重要です。その上で、鎮静剤の使用について適切に判断されます。
8.2. 所要時間は?
大腸カメラの検査にかかる全体の所要時間は、準備から終了までおよそ4時間程度です。まず、検査を受ける前に、腸内をきれいにするために下剤を飲む必要があります。通常、下剤を飲んでから腸内が検査に適した状態になるまで、約2~3時間かかります。
次に、実際の検査自体は短時間で行われます。大腸カメラの検査は平均して15~30分程度で終了します。この間に医師はカメラを使って大腸の内部を詳細に観察します。
最後に、検査後には15-20分程度の休息が必要です。特に鎮静剤を使用した場合、意識が完全に回復するまで休むことが推奨されます。以上のことから、全体の所要時間は4時間程度となります。時間を有効に使うために、あらかじめスケジュールを調整することをおすすめします。
8.3. 金額は?
大腸カメラの検査にかかる費用は、内容によって異なります。基本的な観察だけであれば、1万円前後が一般的です。この金額には、検査に必要な装置や医師の診察代が含まれています。
一方で、検査中にポリープが発見され、それを切除する必要がある場合は、費用が上がります。ポリープ切除を伴う検査の費用は、約25000円前後となります。これは、切除手術に必要な追加の器具や医療費が含まれるためです。
医療施設や地域によって、多少の料金の違いがあるかもしれませんが、一般的には上記の金額で大差はありません。また、ポリープ切除した際には生命保険会社から手術給付金が下りる可能性があります。医療保険に加入している方は事前に保険会社に問い合わせをご検討下さい。