2025年4月24日

札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニック院長の福田遼です。

皆様、健康診断で便検査(便潜血検査)を受けたことはありますか?

便潜血検査は、大腸がんをはじめとする消化器の病気の早期発見に繋がる、非常に重要な検査です。

しかし、その便をどのように採取し、提出するまでどのように保管すれば良いのか、意外と知られていない点も多いようです。

今回は、「健診の便検査ってどう保管すればいいの!?」という疑問にお答えするとともに、便潜血検査で陽性が出た場合の正しい対応、そしてその後の精密検査、特に大腸内視鏡検査の重要性について、詳しくお話ししたいと思います。

皆様の不安を解消し、安心して検査を受けていただくための一助となれば幸いです。

目次
便潜血検査の役割と重要性

便潜血検査がなぜ広く行われているのか、その役割についてお話しします。

大腸がんは、現在、日本人の癌による死亡数において非常に多い病気です。

年間に大腸がんと診断される方は15万人以上、大腸がんで亡くなる方は5万人以上いると言われています。

進行すると、がんが最初に発生した場所(原発巣)から離れた場所、例えばリンパ節や肝臓、肺、さらには骨や脳など全身の臓器に“飛び火”する「転移」を起こすことがあります。

また、がんが増大し腸の壁を突き破って腹膜に散らばる「腹膜播種」を起こすこともあります。

大腸がんが厄介なのは、進行するまで自覚症状がないことが非常に多いという点です。

自分で「おかしいな」と感じる症状(便秘や下痢、腹痛など)が出るのは、がんが進行してからであることがほとんどです。血便が出る場合も、早期の小さながんでは必ずしも出血があるとは限りません。

だからこそ、「早期発見」が極めて重要になります。

大腸がんは、早期に発見し治療を始めることで治癒率が高まります。

よく用いられる指標に5年生存率がありますが、この生存率はがんが進行するほど下がることが分かっています。

また、ステージが低いほど、がんに伴う症状も軽く、治療による身体的な負担も小さく済む傾向があります。

このような背景から、自覚症状のない人の中から大腸がんの可能性のある人を見つけ出す「検診法」として、便潜血検査が非常に有効であると位置づけられています。便潜血検査は、便の中に混じった肉眼では見えない微量の血液を検出する検査法です。

「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」においても、便潜血検査(特に免疫法)は「一定の集団の大腸がんによる死亡率を減少させる」という効果が科学的に証明されており、推奨グレードAと強く推奨されています。



便の採取方法と保管方法

つづいて、具体的な便の採取方法と、「保管方法」についてです。

便の採取自体は、検査キットに付属の説明書をよく読んで、それに従えば問題ありません。

一般的には、付属のスティックなどを使って、便の表面をまんべんなくこすり取るようにして採取します。

微量な潜血を検出するための検査ですので、便全体というよりは、スティックの溝などにしっかり便が付着する程度の「適量」を採取することが大切です。便の量が多ければ多いほど良い、というわけではありませんので、キットの指示に従ってください。

そして、採取した便を提出するまでの「保管方法」についてです。

便潜血検査(免疫法)は、便中のヘモグロビンという「タンパク質」を調べる検査です。このタンパク質は、高温になると変性してしまう性質があります。タンパク質が変性してしまうと、たとえ便中に血液が含まれていても、検査で正しく検出できなくなってしまう可能性があるのです。

これを避けるために、採取した便は、提出するまでできるだけ冷暗所で保管する必要があります。

特に、気温が高くなる夏場は注意が必要です。夏場は、冷蔵庫に入れるか、食品の近くに置くことに抵抗がある場合は、発泡スチロールや保冷バッグに保冷剤と一緒に入れておくなど、温度が高くならないように保管することが推奨されます。

正しく採取し、正しく保管することで、検査の精度を最大限に引き出すことができます。これにより、便中に含まれる微量の血液を正確に検出し、早期の病気のサインを見逃さないことに繋がるのです。



便潜血検査の結果について ~陽性・陰性の意味~

便を提出し、結果を受け取ったとき、結果をどのように解釈すれば良いのでしょうか。

まず、「陽性」と判定された場合です。便潜血検査で陽性が出たということは、便中に血液が混じっていることを意味します。これは、大腸のどこかから出血している可能性があるという、大腸に何らかの異常がある可能性を示唆する重要なサインです。

しかし、「便潜血陽性=大腸がん」と断定できるわけではありません。大腸がん以外にも、大腸ポリープや大腸の炎症(炎症性腸疾患、虚血性腸炎など)、あるいは痔など、様々な原因で便に血液が混じることがあります。

では、「陰性」だった場合はどうでしょうか? 便潜血検査はあくまで「便中の血液の有無」を調べる検査であり、常に血液が出ているわけではない早期のがんや小さなポリープでは、出血がないために陰性となることもあります。

したがって、「便潜血陰性=大腸がんではない」は成り立ちません。陰性だったとしても、大腸がんやポリープが隠れている可能性は否定できないのです。

このように、便潜血検査は簡便で有効なスクリーニング検査ですが、万能ではありません。だからこそ、その結果を正しく解釈し、次の適切なステップに進むことが非常に重要なのです。



陽性者へのメッセージ ~放置は禁物!精密検査へ進みましょう~

便潜血検査で陽性という結果を受け取った方へ。

まずお伝えしたいのは、不安になりすぎず、そして決して放置しないでくださいということです。便潜血検査で陽性が出たこと自体が、大腸に何らかの異常があるかもしれないという体からの重要なSOSです。

特に、1回でも検査で陽性だった場合は、必ず大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)を受けてください。大腸がんや大腸ポリープは常に出血しているわけではないため、たまたま採取した便に血液が混じっていなかったということもあります。

折角の病気発見のチャンスを逃さないように、「もう一度便潜血検査をして陰性だったら大丈夫」とはならないのです。検診施設によっては、便潜血検査で陽性となった方に「再検査」を勧めるところもあるようですが、これはとんでもない間違いです。

さらに、便潜血検査で2日連続陽性が出た場合、1日だけよりも大腸がんリスクが高いことが分かっています。1日だけの陽性と比較して10倍以上大腸がんリスクが高くなるという報告もされています。しかし、症状がないからといって安心できるわけではありません。大腸がんやポリープは症状がないことがほとんどです。

便潜血検査で陽性だった場合、今日明日に急ぐような緊急性は高くない場合がほとんどですが、病状が進行してから見つかるリスクを避けるためにも、できるだけ早く医療機関、特に消化器内科専門医を受診することを強くお勧めします。



大腸内視鏡検査で何がわかる?

便潜血検査で陽性が出た場合に推奨される精密検査が、大腸内視鏡検査です。

大腸カメラは、大腸の粘膜を直接観察できる最も有効な検査です。

大腸カメラ検査では、肛門から細く柔らかいカメラ(スコープ)を挿入し、大腸の内部を詳細に観察します。この検査によって、以下のことが可能になります。

粘膜の状態を直接観察し、炎症、潰瘍、ポリープ、がんなどの病変の有無を正確に確認できます。
5mm以下の小さなポリープも見つけやすく、早期のがんを発見する上で非常に優れています。
疑わしい部分があれば、その場で組織を採取(生検)し、病理検査を行うことで確定診断をつけることができます。
ポリープが見つかった場合、その場で切除することも可能です。

特にポリープは、その多くは良性ですが、種類によっては放置すると将来的にがんに進行するリスクがあります。大腸がんは放置されたポリープから発生することがあるため、ポリープを早期に取り除くことは、大腸がんの予防につながるのです。大腸カメラは、病気を発見するだけでなく、ポリープを切除することで病気を予防するという、二重のメリットを持つ検査と言えます。



大腸がんとリスク、予防

大腸がんのリスクは、様々な要因によって高まります。

主なものとしては、加齢(50歳以上)が挙げられます。実際、40歳頃から大腸がんの死亡率及び罹患率が増加し、特に50歳以上で急増することが分かっています。その他、大腸がんやポリープの家族歴がある方もリスクが高いとされています。

生活習慣も大きく影響します。食生活(赤身肉や加工肉の過剰摂取、食物繊維不足)、喫煙、飲酒、肥満、運動不足などがリスクを高める要因です。バランスの取れた食生活(食物繊維を豊富に含む食品の積極的な摂取、赤身肉や加工肉の控えめな摂取)、適度な運動、禁煙・節酒、適切な体重維持などを心がけることが、大腸がんの予防に繋がります。

食物繊維については、推奨摂取量があり、非常に少ない人では大腸がんリスクが高くなる可能性も報告されていますが、予防効果についてはさらなる研究が必要です。アスピリンの服用が大腸がんの発症を抑制するという研究結果もありますが、出血リスクなどの副作用もあるため、医師の指導のもと適切に行う必要があります。

これらのリスク要因を意識し、生活習慣を見直すことに加えて、40歳を過ぎたら症状がなくても定期的に大腸がん検診(便潜血検査)を受けることが非常に重要です。便潜血検査は、大腸がんによる死亡率を減らす効果があるという十分な証拠があり、特に40歳以上では年1回の受診が推奨されています。そして、もし便潜血陽性となったら、迷わず精密検査(大腸内視鏡検査)を受けてください。



当院で大腸カメラを受けるメリット

当院は、皆様が安心して大腸検査を受けられるよう、様々な取り組みを行っています。

当院の最大の特長の一つは、経験豊富な消化器内視鏡専門医が検査を担当していることです。最新の内視鏡システムを用い、丁寧かつ高精度な検査を行っています。

また、患者様の検査への不安を軽減するために、鎮静剤を用いた「無痛大腸カメラ検査」を提供しています。ほとんど眠ったような状態で検査を受けられるため、「大腸カメラは痛いのではないか?」という心配を大幅に減らすことができます。

さらに、お忙しい方でも検査を受けやすいよう、土日も内視鏡検査に対応しており、ウェブ予約システムで24時間いつでも予約が可能です。大通駅から徒歩30秒という、札幌中心部の抜群の立地も多くの方にご利用いただいております。雨や雪の日でもほとんど濡れずにクリニックまでお越しいただけます。

検査前の食事についても、分かりやすいオリジナルのガイドラインを作成し、患者様の負担を減らす工夫をしています。コンビニ食の例や市販食セットなどもご用意しており、多忙な方でも準備に困らないようにサポートしています。

女性の患者様が安心して検査を受けられるよう、女性スタッフによるサポートや、プライバシーに配慮した検査着の使用など、きめ細やかな対応を心がけております。ムダ毛処理なども気にせず、そのままお越しいただけます。

便潜血検査で陽性が出た方や、血便など気になる症状がある方、あるいは大腸がんのリスク要因をお持ちで定期的な検査をご希望の方、当院では迅速な検査を行い、適切な診断と治療方針を立てることが可能です。

虚血性腸炎や大腸憩室炎などの消化器疾患についても診断・対応しております。また、当院ではアニサキス症の内視鏡による除去術も行っており、当日予約も可能です。

私たちは、患者様一人ひとりの不安に寄り添い、丁寧な説明と質の高い医療を提供することをお約束します。検査後のフォローアップや健康管理に関するアドバイスも行っており、皆様の健康な毎日をサポートできるよう努めてまいります。



最後に

「要精密検査」という結果が出たことは、ご自身の健康について考える良い機会です。

便中に微量の血液が混じっていたという事実は、大腸からの大切なサインかもしれません。

「便の保管方法、大丈夫だったかな?」と心配されている方もいらっしゃるかもしれませんが、それ以上に大切なのは、便潜血陽性という結果を決して軽視せず、精密検査へ進む勇気を持つことです。早期発見・早期治療が、大腸がんから命を守るために最も重要だからです。

当院では、消化器内視鏡専門医による高精度な検査と、患者様の苦痛や不安に最大限配慮した体制を整えております。便潜血検査で陽性だった方はもちろん、血便などの気になる症状がある方、ご家族に大腸がんの方がいるなどリスクが高いと感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。

皆様の健康な未来のために、私たちがお手伝いさせていただきます。安心してご来院ください。心よりお待ちしております。 大腸内視鏡検査は札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニックがおすすめです!



