2025年5月01日

皆さん、こんにちは。札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニック院長の福田です。

患者様から「バリウムと胃カメラ、どっちがいいの?」 とか、

また、「胃カメラをやったら、もうバリウム検査はしなくていいの?」という質問を良く頂きます。

胃がん検診の方法には、主にバリウム検査(胃透視検査)と胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)があります。

基本的には胃カメラを行ったらバリウム検査を追加する必要性は低いですが、それぞれに特徴があり、どちらが優れていると一概には言えません。

今回のコラムでは、胃がん検診の現状と重要性、そしてバリウム検査と胃カメラ検査のそれぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく比較しながら、皆さまにとって最適な検査選びのヒントをお伝えしたいと思います。

特に、当院で行っている鎮静剤を使用した苦痛の少ない胃カメラ検査についてもご紹介し、検査への不安を少しでも和らげ、安心して検査を受けていただけるよう努めます。

目次
なぜ胃がん検診が必要なの?~日本人に多い胃がんの現状~

胃がんは、特に日本人に多い病気の一つです。

早期の胃がんは自覚症状がほとんどなく、進行しても胃炎程度の痛みしか感じないケースも少なくありません。このため、自分で気づいた時には進行している、ということも残念ながら起こり得ます。

胃がんの治療成績は、がんの進行度(ステージ)によって大きく変わります。ステージが低い早期の段階で発見できれば、内視鏡治療や手術で完治できる可能性が非常に高くなります。

しかし、進行すると、生存率が低下し、治療による身体への負担も大きくなってしまいます。

便秘や下痢、腹痛といった自覚症状が出るのは進行してからであることが多く、自分で見つけるのは難しいのです。

だからこそ、症状がないうちから定期的に検査を受け、早期発見に努めることが非常に重要なのです。



バリウム検査(胃透視検査)とは?

バリウム検査は、レントゲンで胃の形や粘膜の凹凸を間接的に観察する検査です。

撮影技師の指示に従って、検査台の上で体をゴロゴロと回転させながら様々な角度から撮影を行います。
バリウム検査のメリット:

費用が安い:
内視鏡検査に比べて費用を抑えられる場合があります。自治体が行う胃がん検診では、自治体の補助が受けられる事があります。

検査の苦痛が少ない場合がある:
鼻からの内視鏡(経鼻内視鏡)が登場したことで一概には言えなくなりましたが、内視鏡と比べて楽だと感じる方もいます。のどを通るカメラの不快感がないのが最大のメリットかもしれません。

スキルス性胃がんの発見が得意な場合がある:
スキルス性胃がんは、胃の壁が硬く厚くなるタイプのがんで、粘膜表面に明らかな凹凸がないため、内視鏡で見つけにくいことがあります。バリウム検査の方が得意な場合もあります。

バリウム検査のデメリット:

検査精度にムラがある:
胃液が多いとバリウムが粘膜に付着しにくく、病変を見落としやすくなることがあります。また、平坦な病変の検出が苦手です。

放射線被曝:
レントゲンを使用するため、わずかですが被曝があります。

バリウム排出のトラブル:
検査後にバリウムが腸で固まってしまい、便秘や腹痛、下血などを起こすことがあります。



胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)とは?

胃カメラ検査は、細長いチューブの先端についた小型カメラを挿入し、粘膜を直接観察する検査です。

疑わしい部分があれば、その場で組織の一部を採取(生検)し、顕微鏡で詳しく調べる病理検査によって確定診断をつけることができます。

胃カメラ検査のメリット:

早期がんの発見に優れる:
粘膜の色の変化やわずかな隆起・凹み、模様の違いなど、詳細な情報を得られるため、特に早期胃がんの発見に優れています。バリウム検査の約2.5倍の発見率という報告もあります。

組織採取による確定診断:
病変が疑われた場合、その場で組織を採取して病理検査を行うことで、良性か悪性か(がんかどうか)の確定診断が可能です。これはバリウム検査ではできません。

治療が同時に可能:
小さなポリープなど、病変の種類によってはその場で切除治療を行うことも可能です。

ピロリ菌の有無を確認し除菌治療に繋げられる:
胃カメラでピロリ菌の感染の有無を確認でき、感染が確認されれば保険適用で除菌治療を行うことができます。ピロリ菌は胃がんの大きな原因の一つと考えられています。

被曝の心配がない:
放射線を使用しないため、被曝の心配がありません。


胃カメラ検査のデメリット:

検査に伴う苦痛:
のどを通る際の反射(えずき)や、胃に空気を入れることによる張り感など、検査に伴う苦痛を感じる方もいらっしゃいます。ただし、近年ではスコープの細径化や鎮静剤の使用により、この苦痛は大幅に軽減されています。

術者の技量に左右される可能性:
バリウム検査と同様に、内視鏡を行う医師の技量や経験によって発見率に差が出る可能性があります。



結局、胃カメラとバリウム検査はどっちがいいの?

胃がん検診は現在ではバリウム検査と胃カメラ検査の両方とも推奨されています。

どちらも一長一短あり、どちらが良いとは一概に言えません。

ただし、早期の胃がんを見つけるという点においては、胃カメラ検査に軍配が上がります。胃カメラは粘膜を直接詳細に観察できるため、わずかな変化も見つけやすいからです。また、疑わしい病変があればその場で組織を採取して確定診断ができることも大きなメリットです。

一方、バリウム検査は胃全体の形を把握することに長けていたり、スキルス性胃がんのような特殊なタイプのがんを見つけやすい場合もあります。費用を抑えたい場合や、どうしても内視鏡検査に抵抗がある場合の選択肢となります。

ご自身の状況や目的を踏まえて選択することが重要です。例えば:
- 徹底的に胃を調べたい方、家系に胃がんの人がいる方、おなかに違和感がある方、最近食欲がない方、ピロリ菌がいると言われたことがある(除菌歴がある)方は、胃カメラ検査をお勧めします。
- 胃の検査にお金をあまりかけたくない方、今まで胃の病気をしたことがない方、みぞおちの痛みなどがない方、40歳未満の方は、バリウム検査でも良いかもしれません。

もし、どちらの検査にも抵抗がある、という方には、「胃ABC検診」という選択肢もあります。これは血液検査でピロリ菌の感染の有無と胃粘膜の萎縮度を調べ、胃がんになりやすい体質かどうかをリスク分類する検査です。ただし、ABC検診は「今現在、胃がんがあるかどうか」がわかる検査ではなく、あくまで「将来、胃がんが発生しやすいかどうか」を調べる簡易検査です。



当院の「苦痛の少ない」検査へのこだわり

「胃カメラは苦しい」というイメージをお持ちの方も多いかと思います。

当院では、患者様のそのような不安や負担を軽減し、安心して質の高い検査を受けていただくための工夫をしています。

1. 鎮静剤を使用した「眠ってできる」検査
当院の最大の特徴は、鎮静剤を使用した「無痛」胃カメラ検査を提供していることです。

鎮静剤を静脈注射することで、検査中はほとんど眠っているような、またはウトウトした状態でリラックスして検査を受けることができます。

これにより、のどを通る際のえずきなどの不快感や検査への恐怖心 が大幅に軽減され、楽に検査を受けることが可能です。

ただし、鎮静剤を使用した場合、検査当日は車や自転車の運転は絶対に避けてください。安全のため、公共交通機関を利用するか、送迎をご家族などに依頼してください。

2. 経鼻内視鏡も選択可能
当院では、鼻から挿入する細い経鼻内視鏡も選択可能です。

経鼻内視鏡はスコープが細いため、のどを通る際の反射が起こりにくく、比較的楽に検査を受けられる方法です。

また、検査中に医師と会話することも可能です。画質についても、現在の経鼻胃カメラは高画質で、口からの内視鏡と遜色ありません。

もちろん、経鼻が難しい方や、より鮮明な画像が必要な場合(特にピロリ菌感染者など) には、口からの内視鏡も可能です。いずれの場合も、患者様のご希望や状況に合わせて最適な方法をご提案します。

3. 経験豊富な消化器内視鏡専門医による検査
胃カメラ検査の精度は、担当する医師の技量と経験に左右される部分があります。

当院には、内視鏡検査に関して経験豊富な消化器内視鏡専門医が常駐しており、丁寧で質の高い検査を提供しています。

見落としをなくし、小さな病変も確実に発見できるよう、常に技術の向上に努めています。

4. アクセス抜群、便利な立地
当院は、札幌大通駅から徒歩30秒という非常に便利な場所にあります。

地下鉄の出口(14Bもしくは15)から出てすぐのビル内に位置しているため、雨や雪の日でもほとんど濡れることなくお越しいただけます。

5. スムーズな予約と当日検査可能
忙しい方でも検査を受けやすいように、Web予約システムを導入しており、24時間いつでも予約が可能です。また、食事をとってなければ当日に検査も可能です。



胃カメラ検査でどんな病気がわかるの?

胃カメラ検査では、胃がん以外にも様々な病気を発見し、診断することができます。

胃潰瘍:
胃の壁に穴が開く病気です。ピロリ菌感染が原因の一つであり、胃カメラで確認し、ピロリ菌がいれば除菌治療を行います。

胃ポリープ:
胃の粘膜にできる盛り上がりで、多くは良性ですが、一部にがん化するものもあります。種類(胃底腺ポリープなど)によって経過観察の方針が異なります。

食道炎・食道がん:
食道の炎症や、食道にできたがんを発見できます。

十二指腸潰瘍:
十二指腸にできた潰瘍を発見できます。

早期の病変は自覚症状がないことがほとんどですので、定期的な検査で早期に発見することが重要です。



胃がんリスク検査(ABC検診)について

胃カメラやバリウム検査に加えて、胃がんのリスクを評価する方法として「胃ABC検診」があります。

これは、血液中のペプシノゲン値(胃粘膜の萎縮度を示す)とヘリコバクター・ピロリ菌の抗体を測定し、これらを組み合わせてA、B、C、Dの4段階で胃がんになるリスクを評価する検査です。

胃がんのほとんどは、ピロリ菌と、ピロリ菌によって引き起こされる胃粘膜の萎縮から発生することがわかっています。ABC検診は、自分がどの程度胃がんになりやすい状態にあるかを調べる検査と言えます。

ただし、ABC検診でリスクが低いと判定されても、現在すでに胃がんが存在しないことを保証するものではありません。ABC検診はあくまでリスク判定であり、精密な検査には胃カメラやバリウム検査が必要です。

当院では、胃ABC検診も行っております(保険適用外、自費となります)。まずABC検診でリスクを調べ、その結果を参考に胃カメラ検査を受けるかどうかを決める、という方法も可能です。



まとめ

胃カメラ検査とバリウム検査は、それぞれ異なる特徴を持つ胃がん検診の方法です。

バリウム検査は比較的簡便で費用を抑えられるメリットがある一方、早期発見の精度や確定診断能力の面では胃カメラ検査に劣ります。

「胃カメラをやったらバリウム検査はしなくていいの?」という問いに対する私の考えは「多くの場合、胃カメラ検査を受ければ、バリウム検査を改めて受ける必要はない」ということです。

特に、胃カメラ検査は早期がんの発見に優れ、確定診断や病変の種類によっては治療も同時に行えるため、精密な検査としては最も有効です。もちろん、バリウム検査にメリットがないわけではありませんが、より包括的で精度の高い診断を求めるなら胃カメラ検査が推奨されます。

当院では、「胃カメラは苦しい」というイメージを覆すために、鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査に力を入れています。経験豊富な専門医による質の高い検査、駅直結のアクセスの良さ、Web予約システムや午前中完結検査など、患者様の負担を減らし、安心して検査を受けていただける環境を整えています。

胃がんの早期発見は、ご自身の健康と大切なご家族のためにも非常に重要です。症状がなくても、定期的な検査を習慣にしましょう。特に40歳を過ぎたら、ぜひ胃がん検診をご検討ください。

皆さまの健康な毎日をサポートできるよう、スタッフ一同努めてまいります。


大腸内視鏡検査は札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニックがおすすめです!


