2025年8月09日

「便潜血検査は陰性だったのに、大腸カメラを受けたらポリープが見つかりました」

「便に血が混じってないのに、大腸がんなんてあるんですか?」

この問いに対して、私たち内視鏡専門医は「はい、あります」と即答します。

今回は、便潜血検査の限界と、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)の重要性について、科学的根拠を交えながら丁寧にご説明したいと思います。

特に、これまで健診で「異常なし」と言われて安心していた方、家族に大腸がんの既往歴がある方、40歳を過ぎたけどまだ大腸カメラを受けたことがないという方にこそ、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。

目次
■便潜血検査とはどのような検査か?

便潜血検査は、便中の血液を検出する検査です。

多くの健康診断で採用されており、患者様が自宅で便を採取して郵送する、手軽で非侵襲的な検査として広く知られています。

この検査は、「便に目に見えないレベルの血が混じっていないか」をチェックすることで、消化管出血の可能性をスクリーニングするものです。特に、出血を伴う大腸がんや大きめのポリープに対しては一定の感度を示し、早期発見の一助になります。

しかし、この「便に血が混じっているか」だけを指標にしてしまうと、いくつかの重大な問題があります。



■便潜血検査の限界:陰性でも大腸がんが見つかる理由

出血していないがんやポリープは見逃される
初期の大腸がんや小さなポリープは、必ずしも出血を伴うわけではありません。便潜血検査はあくまで「出血しているかどうか」を見ているため、出血がない病変はスルーされてしまいます。

出血は断続的:タイミング次第で“陰性”に
仮に病変が出血していたとしても、毎日出血しているとは限りません。たまたま検査の日に出血していなければ、便潜血は「陰性」となってしまいます。これは、2日法(二回採便)であっても同様です。

位置による検出感度の違い
便潜血検査は、直腸やS状結腸など下部大腸のがんに対しては比較的感度が高い一方、上行結腸や盲腸など右側の大腸がんに対しては感度が落ちることが知られています。つまり、「右側にできたがんは、見つかりにくい」という特徴があります。



■実際の症例:便潜血陰性でも見つかったがん

当院でも、以下のようなケースが珍しくありません。

- 60代女性。健診の便潜血陰性だが、お腹の違和感で念のため大腸カメラ → 上行結腸に早期大腸がん発見
- 50代男性。便潜血陰性だったが家族に大腸がん既往あり → ポリープ多数(うち一つは高異型腺腫)
- 40代女性。健診で異常なしも、痔の診察で来院 → 内視鏡検査でポリープ3個切除

これらは氷山の一角に過ぎません。「便潜血陰性だったから大丈夫」と思い込まず、一歩踏み込んで内視鏡検査を受けることで、自分の命を守れることもあるのです。



■数字で見る便潜血検査と大腸カメラの差

日本消化器内視鏡学会や厚労省が発表しているデータでも、便潜血検査の感度はおおむね60~70%前後。つまり、3割~4割は見逃される可能性があるということです。

一方、大腸カメラの検出率は、ほぼ100%に近いと言われています。直接目で見て、必要であればその場でポリープを切除できる内視鏡検査は、「発見」だけでなく「予防」にもつながる検査なのです。

■なぜ「予防」にもつながるのか?
大腸がんは、ほとんどが腺腫性ポリープという良性の腫瘍から時間をかけてがん化すると言われています。逆に言えば、がんになる前のポリープを見つけて切除することができれば、大腸がんそのものを防ぐことができるのです。

実際に、当院でも月に300件以上の内視鏡検査を行い、数多くのポリープを早期に発見・切除しています。ポリープの切除は「その場で」「日帰りで」「苦痛なく」行うことが可能です。



■大腸カメラ=つらい検査? 当院の工夫

「大腸カメラって痛いんでしょう?」
「下剤がつらそうで…」
多くの方がこのような不安を抱えています。当院では、これらの不安を解消するために以下のような取り組みを行っています。

・鎮静剤を使った“うとうと内視鏡”
ウトウトと眠っている間に検査が終わるため、ほとんどの方が「もう終わったんですか?」と驚かれます。

・炭酸ガス送気によるお腹の張り軽減
空気ではなく、すぐに吸収される炭酸ガスを使用しているため、検査後のお腹の張りが大幅に軽減されます。



■便潜血「陰性」でも以下に当てはまる方は、要注意です
- 40歳以上でこれまで大腸カメラを受けたことがない
- 血縁者に大腸がんになった人がいる
- 慢性的な下痢や便秘がある
- お腹が張る、痛む、違和感が続く
- 食事量は変わらないのに体重が減っている
- 貧血を指摘されたことがある
これらはすべて、「精密検査(大腸カメラ)が必要なサイン」です。便潜血検査が陰性でも、油断せずにご自身の体と向き合っていただきたいと思います。


■まとめ:命を守るために「もう一歩」踏み込む選択を

便潜血検査は、完全な検査ではありません。

特に、出血を伴わない初期のがんやポリープに対しては、その限界が明らかです。
「検査は怖い」「面倒くさい」
その気持ちはよくわかります。
ですが、年に一度の内視鏡検査が、あなたの未来を変えるかもしれません。
大腸がんは、早期に見つかれば90%以上が完治可能な病気です。逆に、発見が遅れると命を落とすこともある、決して他人事ではない疾患です。
ぜひ一度、当院にご相談ください。
あなたの不安に、医師として、内視鏡のプロとして、真摯にお応えいたします。


大腸内視鏡検査は札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニックがおすすめです!


