2025年5月05日

札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニック 院長の福田遼です。
あ今回のコラムでは、皆さまからよくいただくご質問の一つ、「検便(便潜血検査)は朝一じゃないとだめですか?」という疑問にお答えしつつ、大腸がん検診の重要性や、その先の精密検査である大腸カメラ検査について、そして当院で安心して検査を受けていただくための取り組みについて、詳しくお話ししたいと思います。

目次
「検便は朝一じゃないとだめですか?」疑問にお答えします

「朝一番のものでないとダメなのでは?」と心配されている方もいると思います。

結論から申し上げますと、日本で主流の便潜血検査(免疫法)においては、特定の時間帯、例えば「朝一番に採取しなければならない」というような厳密な決まりはございません。

これは、免疫法の特徴に理由があります。免疫法は食事の内容に影響を受けないため、いつ便を採取していただいても、その結果が食事に左右されることはありません。したがって、ご自身の都合の良い時間帯に、自然な排便があった際に採取していただいて問題ありません。

便潜血検査では通常、「2日法」といって、別々の日の便を2回採取して提出します。これは、大腸からの出血が常にあるとは限らないため、複数回検査することで、より正確に、つまり出血があった可能性を見逃しにくくするためです。

別日に採取することで、より高い精度で出血の有無を調べることができます。もし、たまたま朝排便があった場合は朝に、お昼や夜に排便があった場合はその時に採取していただいて構いません。重要なのは、指示された回数(通常2回)を、可能な限り異なる排便機会に採取していただくことです。



便潜血検査の方法

便の採取方法については、使用する検査キットに添付の説明書をご参照ください。

一般的な注意点としては、便の表面をまんべんなくこすり取るようにすること、そして、採取量は多すぎても少なすぎても正確な検査ができない可能性があるため、キットの指示された量を守っていただくことです。

また、便中のヘモグロビンというタンパク質を調べる検査ですので、採取後はできるだけ高温を避け、冷暗所で保管することが推奨されます。

特に夏場は気温が高くなりますので、冷蔵庫に入れるか、難しい場合は保冷剤と一緒に発泡スチロールなどに入れて保管すると良いでしょう。

痔の治療で軟膏を使用している場合も、軟膏の成分自体は検査結果に影響しませんが、軟膏が付着した部分だけを採取しないように注意が必要です。




便潜血検査とは、大腸がんを見つけるための大切な第一歩

まず、皆さんが「検便」と呼んでいるものの多くは、「便潜血検査」のことです。

これは、肉眼では確認できない便に混じった微量の血液を検出することで、大腸からの出血の有無を調べる検査です。大腸がんや大腸ポリープがあると、便が通過する際に病変部から出血することがあります。

便潜血検査は、このような出血を手がかりに、大腸がんの可能性のある方を見つけ出すための、集団検診(対策型検診)として国が推奨しているスクリーニング検査です。

特に、日本で広く用いられているのは「免疫法」という検査方法です。この免疫法は、ヒトの赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質に特異的に反応する試薬を使うため、食事に含まれる肉や野菜の成分に反応してしまう化学法とは異なり、検査前に食事制限をする必要がありません。

便を採取して提出するだけで済むため、体内に機械や薬剤を入れたり、長時間検査を受けたりする必要がなく、非常に簡便で身体への負担が少ない検査と言えます。



便潜血検査の「陽性」と「陰性」の意味、そしてその限界

便潜血検査で陽性となる方の割合は、全体の5~10%程度と言われています。

ただし、便潜血検査が陽性だったからといって、必ずしも大腸がんであるというわけではありません。大腸粘膜の炎症や、痔からの出血など、がん以外の原因でも陽性となることがあります。便潜血検査だけでは、どこから出血しているのかを特定することはできません。

一方で、便潜血検査が「陰性」だったとしても、大腸がんが完全に否定されるわけではありません。早期の大腸がんや小さなポリープは、常に出血しているとは限らず、たまたま検査のために採取した便に血液が混じっていなかった、ということもあり得ます。

そのため、「便潜血陰性=大腸がんではない」とは言い切れないのです。特に、便潜血検査の2回法でも、早期がんの約50%、進行がんの約90%の発見が可能とされていますが、これは裏を返せば、早期がんの約半数は見逃される可能性があるということです。

つまり、便潜血検査はあくまで「スクリーニング検査」、ふるい分けの検査であり、大腸に何らかの異常がある可能性を示唆する「重要なサイン」と捉えるべきものです。



便潜血検査「陽性」は大腸カメラを受けるべきサイン

では、便潜血検査で「陽性」という結果が出た場合、どうすれば良いのでしょうか。

最も重要なのは、必ず精密検査を受けることです。一度でも陽性だった場合は、たとえ体調に変化がなくても、必ず医療機関を受診し、精密検査を受けてください。もう一度便潜血検査をして陰性だったから大丈夫、ということは決してありません。

精密検査の中でも、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)は、大腸の粘膜を直接、詳細に観察できる最も有効な検査です。大腸カメラ検査では、便潜血検査では分からなかった出血の原因(痔、炎症、ポリープ、がんなど)を特定できます。また、ミリ単位の小さな病変も見つけやすく、早期の大腸がんを発見する上で非常に優れています。もし疑わしい病変が見つかれば、その場で組織の一部を採取(生検)し、顕微鏡で詳しく調べることで、良性か悪性か、つまり「がん」かどうかの確定診断をつけることができます。これは、バリウム検査ではできない、内視鏡検査の大きな強みの一つです。

さらに、大腸カメラ検査の最大のメリットの一つは、大腸がんになる可能性のある「前がん病変」である大腸ポリープを、その場で切除できることです。大腸ポリープの多くは良性ですが、種類によっては時間をかけて悪性化し、大腸がんへ進行するものがあります。ポリープを早期に発見し、内視鏡で切除することで、将来的な大腸がんの発症リスクを大幅に減らすことができるのです。まさに「予防的な治療」と言えるでしょう。内視鏡によるポリープ切除は、お腹に傷をつける外科手術に比べて体への負担が少なく、多くの場合は日帰りでの対応が可能です。

便潜血検査で陽性が出たにも関わらず精密検査を放置してしまうと、もしがんが隠れていた場合に、その間に病状が進行してしまう危険性があります。大腸がんは進行するまで自覚症状がないことが多く、症状が現れた時には、残念ながら病気が進行している可能性が高くなっています。早期に発見できれば、内視鏡治療など体への負担が少ない治療で完治が期待でき、生存率も高くなります。ステージが進行するにつれて生存率は下がりますので、便潜血陽性というサインを見逃さずに、早期に大腸カメラ検査を受けることが、ご自身の命を守る上で非常に重要になります。

また、大腸カメラ検査では、大腸がんやポリープだけでなく、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)、大腸憩室症、虚血性腸炎、痔など、様々な大腸の病気を見つけることができます。これらの病気も、無症状で進行していることが少なくありません。



症状がなくても定期的な大腸カメラ検査が推奨される方

どのような方が内視鏡をすべきなのでしょうか。

便潜血検査は、あくまで「症状がない人」を対象としたスクリーニング検査ですが、皆さまの中には、便秘や下痢が続く、お腹が張る、便が細くなった、血便がある(痔かもしれないが心配)、といった気になる症状がある方もいらっしゃるかもしれません。

このような症状がある場合は、便潜血検査を待つのではなく、まずは医療機関(消化器内科など)を受診し、医師にご相談ください。症状がある場合は、医師が必要と判断すれば、健康保険が適用されて大腸カメラ検査を受けることができます。

また、症状がなくても、定期的な大腸カメラ検査が推奨される方々がいらっしゃいます。 厚生労働省は大腸がん検診を40歳以上の方に推奨しており、特に50歳以上になると大腸がんの罹患率・死亡率が急増するため、この年代の方は大腸カメラを検討すべきです。

これに加えて、以下に該当する方は、大腸がんのリスクが高いと考えられています。

ご家族に大腸がんや大腸ポリープになった方がいる
加工肉の摂取が多い、食物繊維が不足しているなど、食生活に偏りがある
喫煙習慣がある
飲酒量が多い
肥満気味である、運動不足である

これらのリスク要因を複数お持ちの方や、ご心配な方は、症状がなくても定期的に大腸カメラ検査を受けることで、大腸がんの早期発見や予防につなげることが非常に重要です。

40代になると大腸がんのリスクは確実に高まりますので、この年代になったら一度大腸カメラ検査を受けることを検討し、ご自身の腸の状態を確認しておくことをお勧めします。



大腸カメラ検査への不安を解消するために – 当院の取り組み

当院では、安心して検査を受けていただけるよう、様々な工夫を凝らしています。

1. 苦痛を最大限に軽減する「無痛内視鏡検査」
大腸カメラ検査に伴う身体的な苦痛(お腹の張りや痛みなど)を軽減するために、当院では積極的に鎮静剤を用いた「無痛内視鏡検査」を行っています。鎮静剤を使用すると、ウトウトしたり、ほとんど眠っているような状態で検査を受けることができます。
これにより、検査中の不快感や苦痛を大幅に和らげることが可能です。もちろん、鎮静剤を使用せずに検査を受けることも可能ですので、ご希望に応じて選択していただけます。鎮静剤を使用した場合は、検査当日は車の運転ができませんのでご注意ください。

2. 女性の患者様へのきめ細やかな配慮
大腸がんは女性のがん死亡原因の第1位でありながら、大腸カメラ検査への恥ずかしさなどから、乳がんや子宮がん検診に比べて受診率が低い現状があります。

当院では、女性の患者様が抱える不安に寄り添い、安心して検査を受けていただけるよう、特に配慮しています。 「お尻や肛門を見られるのが恥ずかしい」、「検査当日に生理になったらどうしよう」といった女性特有のご心配にも丁寧に対応いたします。

検査時は、お尻の部分に縦のスリットが入った専用の検査着を着用していただきますので、立った状態ではお尻が完全に覆われ、検査中も必要最低限の露出に留まるよう配慮しています。

検査当日に生理になった場合でも、子宮と大腸は別の臓器ですので、大腸カメラ検査は問題なく受けることができます。血の量が気になる場合はタンポンを使用することも可能です。また、女性スタッフによる検査前後のサポート体制も整えておりますので、ご不安なことは何でもお気軽にご相談ください。

3. 胃カメラと大腸カメラの同日検査が可能
胃の検査(胃カメラ)と大腸の検査(大腸カメラ)を両方受けたいという方もいらっしゃるかと思います。

通常、これらの検査は別々の日に予約して行うことが多いのですが、当院では胃カメラと大腸カメラの同日検査が可能です。

同日検査の最大のメリットは、検査前の食事制限や時間の拘束、鎮静剤使用後の運転制限といった負担を一度で済ませられることです。

4. アクセスの良さと土日診療
当院は札幌市中心部、大通駅から徒歩すぐという非常にアクセスしやすい場所に位置しています。

地下鉄大通駅の出口(14Bまたは15番出口)から出てすぐのビル内にありますので、雨や雪の日でもほとんど濡れることなくお越しいただけます。

お仕事帰りやお買い物のついでにも立ち寄りやすく、通院の負担を最小限に抑えることができます。また、平日はお忙しい方のために、土日も内視鏡検査を行っています。



便潜血検査は重要なサイン、その先の精密検査で安心を

今回のコラムでは、便潜血検査の採取時間に関する疑問についてお話ししました。

便潜血検査は、手軽に受けられる大腸がんのスクリーニング検査ですが、「朝一」にこだわる必要はなく、ご自身の排便習慣に合わせて採取できます。しかし、便潜血検査は万能ではなく、陽性でもがんではない可能性、陰性でもがんが隠れている可能性があります。

最も重要なのは、便潜血検査で陽性という結果が出た場合に、必ず精密検査である大腸カメラ検査を受けていただくことです。これは、大腸がんを早期に発見し、適切な治療につなげるための、そして前がん病変であるポリープを切除してがんを予防するための、非常に大切なステップです。

また、便秘や血便などの症状がある方、そしてご家族に大腸がんやポリープの病歴がある方、その他リスクの高い方は、便潜血検査の結果に関わらず、定期的な大腸カメラ検査を検討されることを強くお勧めします。大腸がんは早期発見すれば治る可能性が高いがんです。自覚症状がないうちから定期的な検査を受けていただくことが、早期発見、そして皆さまの健康寿命を守ることに繋がります。

当院では、皆さま一人ひとりが抱える検査への不安に寄り添い、消化器内視鏡専門医による質の高い検査と、鎮静剤や女性への配慮など、苦痛や恥ずかしさを最大限に軽減するための様々な工夫を行っています。大通駅から徒歩すぐの便利な立地で、土日も診療しておりますので、お忙しい方も安心して受診いただけます。

便潜血検査の結果についてご心配な方、気になる症状がある方、大腸がんのリスクが気になる方など、どのようなことでも構いません。まずは一度、当院にご相談ください。皆さまが安心して、そして快適に検査を受けていただけるよう、スタッフ一同、精一杯努めさせていただきます。


大腸内視鏡検査は札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニックがおすすめです!


