2025年3月27日

札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニック院長の福田です。

今回は、突然の血便で発症することの多い、虚血性腸炎について写真を用いて詳しく解説させていただきます。

左下腹部の急な痛みとともに血便が見られた場合、それは虚血性腸炎の可能性があります。

目次
1.血便というサイン

血便は、消化管のどこかで出血が起こっていることを示す重要なサインであり、その原因は様々です。

痔などの比較的軽微なものから、大腸がんのような重篤な病気まで考えられます。

その中でも左下腹部痛と血便が特徴的な虚血性腸炎という病気があります。

これは若年~中年の女性に多くみられる疾患で、一時的に大腸の血流が途絶える事で大腸に炎症をきたし、血便がみられます。

便秘がちな方で生じやすく、複数回の下痢が出た後に血便になる事が特徴的です。



2.虚血性腸炎とは?

虚血性腸炎とは、大腸への血流が一時的に不足することで、炎症や潰瘍を引き起こす病気です。

- 概要と発症メカニズム:大腸を栄養する血管に動脈硬化や血栓、急激な血圧低下、脱水、便秘などが原因で血流が一時的に滞ることがあります。その結果、腸の粘膜が虚血状態となり、炎症を引き起こします。

- 中年女性に多い理由: 虚血性腸炎は、中年以降の女性に比較的多く見られる傾向があります。これには、女性ホルモンの変動や便秘の既往などが関連していると考えられています。

- 原因となりうるその他の要因: 高齢、動脈硬化、高血圧、糖尿病、心疾患などの基礎疾患を持つ方も、虚血性腸炎を発症しやすいとされています。



3.虚血性腸炎の症状

虚血性腸炎の症状は、突然現れることが多く、以下のような特徴があります。

- 初期症状: 急な腹痛、特に左下腹部の痛みが典型的です。

- 特徴的な症状: 痛みの程度は様々ですが、激しい痛みを伴うこともあります。また、下痢や血便が見られることも重要な症状です。

- 血便の性状: 血便の色は、出血部位に近いほど鮮やかになります。虚血性腸炎の場合、血液が粘液に混じったような粘血便が見られることもあります。ものによってはイチゴジャムのように見える事もあります。



4.虚血性腸炎の診断

虚血性腸炎の診断には、以下の検査が行われます。

- 問診と身体診察: 医師が症状や既往歴などを詳しくお伺いし、腹部の状態を診察します。

- 画像診断:
- 腹部超音波検査: 下行結腸~S状結腸にかけての腸管の炎症所見を確認します。
- CT検査: より詳細な腸の状態や、他の疾患との鑑別を行います。

- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ): 大腸の粘膜の状態を直接観察できる最も重要な検査です。
- 重要性: 大腸内視鏡検査を行うことで、虚血性腸炎による粘膜の炎症や潰瘍、出血などを直接確認できます。また、他の血便の原因となる疾患(大腸がん、大腸ポリープ、炎症性腸疾患など)との鑑別も可能です。
- 内視鏡での所見: 虚血性腸炎の場合、大腸内視鏡検査では、下行結腸からS状結腸にかけて広がる赤みや縦走するびらんが確認されることが多いです。

- その他の検査: 貧血の有無などを調べるために血液検査が行われることもあります。



5.実際の症例

当院に実際にいらした虚血性腸炎の症例をご紹介します。

40代女性を襲った腹痛と血便

来院2日前の朝食後に左下腹部痛と下痢が始まり、症状が悪化するにつれて便に血が混じるようになったといいます。ご本人は大腸癌が心配で当院を受診されました。

まず、腹部超音波検査を行ったところ、下行結腸に炎症所見をみとめ、虚血性腸炎の疑いが濃厚となりました。初期治療として症状を和らげる処置を行いましたが、念のため悪性疾患の可能性を否定するため、後日大腸内視鏡検査を行うことになりました。

そして、大腸内視鏡検査の結果、下行結腸からS状結腸にかけて、炎症による赤みと、縦に走るびらん(浅い傷)が確認されました。

これらの所見は、虚血性腸炎に特徴的なものであり、大腸がんなどの悪性疾患の心配はないと診断がつきました。その後は、特に治療を行うことなく、経過を観察することとなりました。

虚血性腸炎とは? その原因と症状

虚血性腸炎は、大腸への血流が一時的に減少し、腸の組織が酸素不足になることで引き起こされる炎症です。原因としては、動脈硬化や血栓のほか、急な血圧低下、脱水、便秘などが考えられます。
特に、更年期を迎える中年女性は、女性ホルモンの減少により血管が硬くなりやすいことや、便秘になりやすいことから、発症しやすい傾向があります。

主な症状としては、
•突然の激しい腹痛 •下痢 •血便 •発熱 •吐き気
などが見られます。

なぜ大腸内視鏡検査が重要なのか

今回の症例のように、血便は大腸がんやポリープ、炎症性腸疾患など、さまざまな病気のサインである可能性があります。そのため、原因を特定するためには大腸内視鏡検査が非常に重要な役割を果たします。
大腸内視鏡検査では、大腸の粘膜を直接観察し、炎症や潰瘍、ポリープなどの有無を確認することができます。今回の症例でも、大腸内視鏡検査によって虚血性腸炎の特徴的な所見を確認し、悪性疾患を否定することができました。



6. 札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニックでの虚血性腸炎の診療

当院では、左下腹部痛や血便などの症状に対し、迅速な診断と適切な治療を提供しております。

- 迅速な診断体制: 専門医が問診、身体診察、画像検査などを迅速に行い、診断を進めます。

- 大腸内視鏡検査の実施: 虚血性腸炎の確定診断に不可欠な大腸内視鏡検査を、鎮静剤を使用した無痛検査で受けていただくことが可能です。また、当日検査にも可能な限り対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

- 丁寧な説明とアフターフォロー: 検査結果について丁寧に説明し、治療方針や日常生活での注意点などを詳しくご案内いたします。

当院で内視鏡検査をご希望の方は以下のリンクからご予約ください。

7.血便が見られた際の注意点

血便が見られた場合は、自己判断せずに、早めに医療機関を受診することが重要です。

- 出血の色や量、排便の状況などを記録しておくと、医師に伝える際に役立ちます。

- 特に、激しい腹痛や貧血症状、頻回の血便が見られる場合は、速やかに救急外来を受診してください。



8.まとめ

虚血性腸炎は、突然の左下腹部痛と血便を主な症状とする疾患です。

当院では、専門医による迅速かつ丁寧な診療と、苦痛の少ない大腸内視鏡検査で、皆様の健康をサポートいたします。左下腹部痛や血便などの症状でお困りの方は、我慢せずに、お気軽にご相談ください。


内視鏡検査は札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニックがおすすめです!


