2025年4月29日

札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニック院長の福田遼です。

患者様からよくいただく質問の一つに、「大腸カメラ検査は、一体何歳から受けるべきなのでしょうか?」というものがあります。

健康診断で「便潜血陽性」という結果を受けて初めて大腸カメラという言葉を耳にした方、あるいはご家族が大腸がんに罹患されてご自身のことが心配になった方など、様々なきっかけでこの疑問を持たれることと思います。

このコラムでは、大腸がんの現状やリスク、そして大腸カメラ検査がなぜ重要なのかを詳しく解説し、最適な検査の開始年齢について、国の推奨や医学的な知見、そして当院の考えをお伝えしたいと思います。

目次
大腸検査は何歳で初めて受けるべきか?

国の指針では40歳以上の方に年1回の便潜血検査を推奨しています。

そして便潜血陽性となった場合は精密検査(大腸カメラ)を受けることになります。

しかし、前述の通り、便潜血検査は万能ではありません。また、40代から50代にかけて大腸がんの発生率は急増します。この年代は働き盛りであり、健康管理が疎かになりがちです。一方で、統計によればこの年代での罹患率は非常に高いことが示されています。

特に40代後半から50代前半にかけて、発見が遅れることで進行が進んでしまうケースが増えています。

さらに、近年では若年層においても大腸がんが増加していることが指摘されています。これは食の欧米化やライフスタイルの変化が主な要因とされています。

このような状況を踏まえると、便潜血検査の結果に関わらず、以下に当てはまる方は、たとえ40歳未満であっても一度大腸カメラ検査を受けることを検討すべきだと考えています。

大腸がんやポリープの家族歴がある方
家族に大腸がんの方がいる場合、遺伝的要因もリスクを高めることが報告されています。家族歴がある場合や過去にポリープが見つかった場合は、検査を頻繁に行うことが推奨されます。

血便、便秘と下痢を繰り返す、便が細くなったなど、気になる消化器症状がある方
便が細くなる原因には、便が必要以上に軟らかくなっている、あるいは大腸内に狭窄(狭くなっている場所)があるなどが考えられます。

便潜血検査で陽性になった方
便潜血検査で引っかかった方は例え一回でも陽性なら精密検査を受けましょう。

喫煙習慣がある方
タバコに含まれる有害物質が血液や腸内に影響を及ぼし、がんの発生を促進するからです。

過度の飲酒習慣がある方
多量飲酒に伴い大腸癌の発生が報告されております。

肥満の方
体重が過剰にあると、腸内の炎症が促進されやすくなるからです。

赤身肉や加工肉を過剰摂取している方
特に加工肉を頻繁に摂取する方で大腸癌が多い事が報告されております。

過去に大腸ポリープを切除した経験がある方
大腸ポリープのできやすさには個人差があるため、将来的に再発や別の疾病による手術が必要になる可能性も考えておくべきです。

これらのリスク要因を総合的に理解し、適切な対策を講じることが重要です。
そして、特にリスク要因がなくても、40歳になったら一度、大腸カメラ検査を受けることを強くお勧めします。症状がなくても定期的に大腸がん検診を受けることが非常に重要です。なぜなら、症状がないうちに病変を見つけ、ポリープの段階で切除することが、最も効果的な大腸がんの予防策だからです。



増え続ける大腸がんの脅威 〜他人事ではない現実〜

まず、日本の大腸がんの現状についてお話しさせてください。

残念ながら、がんは日本人の死因の第1位であり、一生のうちにがんと診断される確率は2人に1人、がんで亡くなる確率は4~6人に1人と言われています。

その中でも、大腸がんは非常に罹患率の高いがんです。国立がん研究センターのデータによると、2019年には約37万6千人ががんで亡くなっており、がんの種類別に見ると、大腸がんは女性では死亡数第1位、男性では肺がん、胃がんに次いで第3位、男女合わせると第2位となっています。

過去との比較では、1969年から2019年までの半世紀で、大腸がんの死亡数は男性で約4千人から約2万7千人へ、女性で約4千人から約2万4千人へと、約6倍にも増加しています。この増加の背景には、食生活の欧米化や運動量の減少など、様々な要因が関係していると考えられています。現在日本では、年間15万人以上もの方が新たに大腸がんと診断されており、便検査での異常は、見過ごせない身体からのサインです。

「大腸がんである」「大腸がんの疑いがある」と告げられることは、大きなショックを伴うことでしょう。これから自分の身にどのようなことが起こるのか、不安でいっぱいになるかもしれません。しかし、どうかあわてないでください。大腸がんは、ほかのがんに比べて比較的治りやすいがんの一つです。早期に発見して適切な治療を行えば、治癒の可能性は十分にあります。



なぜ早期発見が重要なのか? 〜ステージと生存率の関係〜

大腸がんの早期発見がなぜそれほど重要なのでしょうか。

それは、がんの「ステージ(病期)」と「5年生存率」に深く関係しているからです。

がんのステージは、がんが大腸の壁に入り込んだ深さ(深達度)、リンパ節転移の程度、そして肝臓や肺など他の臓器への遠隔転移の有無によって決まります。ステージは0からⅣまでの5段階に分類され、数字が大きいほど進行している状態を示します。

ステージが進むほど予後が悪くなる事がわかっており、がんが発見できても臨床病期(進展度、ステージ)が進んでいる状態で見つかった場合は、5年生存率が下がります。逆に言えば、早期がんのうちに発見して治療することが非常に重要なのです。

早期に治療を開始することで、治療の成功率が高くなるだけでなく、治療の負担も軽減され、患者様の生活の質が向上します。さらに、早期に見つけることで、転移のリスクを低減することができます。

ただし、早期発見が遅れたとしても、手遅れになるまでには大腸がんの場合は年単位の時間がかかります。そのため、症状がはっきり出た後でも遅いという事はなく病院を受診するのが大切です。



自分で気づく症状の限界 〜大腸がんの「厄介な性質」〜

大腸がんは進行するまで自覚症状がないことが多いです。

進行すると便秘や下痢、腹痛などの症状が出ることもありますが、できればその前に発見することが望ましいのは言うまでもありません。

また、血便も大腸がんのサインとなり得ますが、血便が出たとしてもそれが大腸がんによるものか、痔など他が原因かを自己判断するのは非常に危険です。重要なのは、血便をただの一過性の現象として無視せず、早期に医療機関を受診することです。

つまり、症状がないうちから定期的に検査を受けることが、大腸がんを早期に発見するための鍵となります。



大腸がんを見つけるための検査方法 〜便潜血検査と大腸カメラ〜

大腸がんを見つけるための検査にはいくつか種類があります。

国の指針が大腸がんの一次検診の方法として勧めているのは、「便潜血検査」です。

便潜血検査は、便の中に混じった微量の血液を検出する検査法です。特に日本では、食事制限などが不要な「免疫法」が主流となっています。便を採取して提出するだけという簡便さから、体への負担が少ない検査です。

この便潜血検査は、大腸がんによる死亡率を減らす効果があるという十分な証拠があり、40歳以上では年1回受けることが推奨されています。特に50歳以上の方には強く推奨されています。これは、40歳頃から大腸がんの死亡率及び罹患率が増加し、特に50歳以上で急増するからです。

しかし、便潜血検査には限界もあります。便中の血液の有無を調べるため、陰性でも早期がんや進行がんが隠れていることもあります。早期のがんや小さなポリープでは、必ずしも出血があるとは限りません。便潜血検査はあくまでスクリーニング検査であり、限界もあることを理解しておく必要があります。

そこで重要になるのが、精密検査としての大腸カメラ(大腸内視鏡検査)です。便潜血検査で「異常あり」と判定された場合、最も重要なのは精密検査を受けることです。便潜血陽性の方は、自分勝手な解釈はせず、消化器内科を受診しましょう。一度でも検査で陽性だった場合は、必ず大腸カメラ検査を受けてください。もう一度便潜血検査をして陰性だったら大丈夫とはなりません。

大腸カメラでは肛門から大腸に直接細長いカメラを挿入し、大腸粘膜を観察します。
大腸内を観察した際に大腸癌の前癌病変である、大腸ポリープを見つけた場合には直接その場で切除する事が可能です。

ポリープは良性の腫瘍ですが、その一部が時間をかけて悪性化し、大腸がんになることがあります(これを腺腫性ポリープといいます)。ポリープを早期に発見し、その場で切除することで、大腸がんの発症リスクを大幅に減らすことができます。大腸がんの予防には定期的な内視鏡検査とポリープ切除が有効です。



当院での大腸カメラ検査 〜苦痛を最小限に、安心して受けられるために〜

「大腸カメラ検査は痛いのではないか?」といった不安の方もいると思います。

当院では、患者様のこれらの不安を和らげ、安心して、そして苦痛なく検査を受けていただけるよう、様々な工夫を凝らしています。

消化器内視鏡専門医による検査:
内視鏡検査に関して経験豊富な消化器内視鏡専門医が、最新の内視鏡システムを用いて、丁寧かつ高精度な大腸カメラ検査を行っております。内視鏡医の検査技術によって大腸がん予防率が違うという報告もあり、患者一人ひとりを大切にした診療を心掛けています。

鎮静剤を用いた「無痛大腸カメラ検査」:
「大腸カメラは痛いのではないか?」と心配される方は少なくありません。当院では、そのような不安を軽減するために、鎮静剤を用いた「無痛大腸カメラ検査」を提供しております。鎮静剤を使用することで、検査中はほとんど眠ったような状態で受けることができ、検査による苦痛や不快感を大幅に軽減することが可能です。

恥ずかしさに配慮した検査着:
検査当日着用する検査着は、前の患者様の汚れなどが気にならない使い捨てのものを使用しています。立った時にはお尻の部分はすっぽりと覆われるため、検査着着用の際の肛門部の恥ずかしさはほとんどありません。検査を始める際にも、検査用穴あきパンツのお尻の部分をほんの少し露出させるだけなので、ご安心下さい。

胃カメラとの同時検査:
当院では、胃カメラと大腸カメラの同時検査も可能です。これにより、食事制限や時間的拘束、運転制限といったご負担を1日で済ませることができます。別々に検査を受けるよりも費用が抑えられることも多いです。

通いやすい立地と予約体制:
当院は札幌市の中心街、大通駅徒歩30秒という非常にアクセスしやすい場所にあります。大通駅の出口(14Bもしくは15)から出てすぐのビルの中に位置しているため、雨や雪の日でもほとんど濡れることなくクリニックへと足を運ぶことが可能です。また、お忙しい方でも検査を受けやすいように、土日も内視鏡検査に対応しています。WEB予約も可能です。



定期的な検査と健康管理の重要性

大腸がんは年々増加しており、早期発見し治療を始めることが重要です。

症状がないうちから定期的に検査を受けることで、大腸がんやポリープを早期に発見・切除し、健康寿命を延ばすことができます。特に、40歳を過ぎたら、症状がなくても定期的な大腸がん検診を受けることが非常に重要です。

そして、健康管理のためには検査だけでなく、日々の生活習慣も大切です。バランスの取れた食生活(食物繊維を豊富に含む食品の摂取、赤身肉や加工肉の摂取を控える)、適度な運動、禁煙、節酒、適切な体重維持、ストレスの管理 などが、大腸がんを含む様々な疾患の予防につながります。

食物繊維の摂取量は成人で一日約20~25グラムが推奨されていますが、日本人の平均摂取量はこれを下回る傾向にあります。米国がん研究協会は、がんのリスクを下げるには少なくとも1日あたり30グラムの食物繊維を摂取するよう推奨しています。



まとめ

大腸カメラ検査は40歳を目安に、一度受けていただくことをお勧めします。

そして、大腸がんやポリープの家族歴がある方、気になる症状がある方などは、年齢に関わらず早めに専門医に相談することが大切です。

当院では、消化器内視鏡専門医による質の高い検査を、鎮静剤を用いた無痛内視鏡や女性への配慮など、様々な工夫によって、患者様がリラックスして受けられる環境を整えております。

大腸カメラ検査は、怖い検査ではなく、あなたの未来の健康を守るための大切な一歩です。

もし、大腸カメラ検査に対して不安や疑問をお持ちでしたら、ぜひ一度当院にご相談ください。患者様の健康状態やリスクを考慮し、最適な検査のタイミングや方法をご提案させていただきます。


大腸内視鏡検査は札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニックがおすすめです!


