2025年12月07日

こんにちは!札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニック栄養士の田中です!
近年、下痢・腹部膨満感・ガス・腹痛といった消化症状に悩む人を中心に注目されている「低FODMAP(フォドマップ)食」。
腸に吸収されにくく、発酵されやすい糖質を避けることで、腸内でのガス発生や水分分泌を抑え、過敏性腸症候群(IBS)の症状改善が期待できる食事法です。
今回はその中でも低FODMAP食材だけで作れる「豚肉と彩り野菜の炒め丼」のレシピをご紹介します。
主に使用する食材は、豚こま切れ肉・小松菜・赤パプリカ・卵です。
どれも低FODMAPに分類され、かつ栄養価の高い食材です。
本記事では、各食材の栄養素が大腸にどのような良い影響を与えるのか、また腸トラブルを抱えている方にとってどのようなメリットがあるのか、医学的視点も交えて詳しく解説していきます。
ぜひ、最後までご覧ください。
目次
甘辛味噌とシャキシャキ野菜がご飯にぴったり
【豚肉と彩り野菜の炒め丼】

材料(2人分)
・豚こま切れ肉 150g
・小松菜 100g
・赤パプリカ 1/4個
・卵 1個
・ごま油 大さじ1/2
・ご飯 300g
以下の調味を混ぜ合わせておく(A)
・味噌 大さじ1
・本みりん 大さじ1
・醤油 小さじ1
・砂糖 小さじ1
・生姜(チューブ) 2センチ
作り方
1.小松菜は食べやすい大きさにザク切り。赤パプリカは細切りにする。
2.熱したフライパンにごま油をひき、豚こま切れ肉を炒める。
豚肉にしっかり火が通ったら小松菜、赤パプリカの順に加え炒めていく。
3.フライパンの端に具材を寄せ、空いたスペースに割ほぐした卵を入れ、炒り卵にする。
4.具材全体を混ぜ合わせ、(A)の合わせ調味料を入れて味を整える。
5.器に盛ったご飯にかけたら完成。
▲ポイント▲
・豚こま切れ肉が大きい場合は食べやすい大きさに切りそろえてください。
・お好みで白胡麻や胡椒をかけてもOK
■ 低FODMAPレシピの特徴
低FODMAP食の最大の特徴は、腸に吸収されにくい糖質(発酵性オリゴ糖・二糖類・単糖類・ポリオール)を制限することで、腸内ガスによる張り、痛み、急な下痢などを軽減する点にあります。
消化器症状を持つ人にとって、食事は“刺激に感じるもの”になりがちですが、低FODMAPレシピを活用すると、次のようなメリットがあります。
・食後の腹部膨満感が軽減しやすい
・ガスの発生が抑えられる
・下痢・便通不安が落ち着きやすい
・食事のストレスが減り、生活の質が向上する
今回ご紹介するレシピ【豚肉と彩野菜の炒め丼】は
「しっかり食べたいけれど、腸に負担をかけたくない」という方に最適な一品です。
■ 大腸と全身にうれしい栄養と効果
ここからは使用食材が腸と身体にどのように働くのか、ひとつずつ詳しく解説します。
1. 豚こま切れ肉の栄養と腸へのメリット
豚肉は低FODMAP食品であり、IBSの方でも比較的症状が出にくいタンパク源です。
・良質なたんぱく質
→大腸粘膜の修復や免疫維持に欠かせない。腸管上皮細胞は3〜4日で入れ替わるため、たんぱく質が常に必要。
・ビタミンB1(疲労回復ビタミン)
→ 糖質代謝を助け、エネルギー不足による胃腸不調を予防。
・ビタミンB6(代謝をサポート)
→ 腸粘膜の再生を助ける。
・脂質(適度な量)
→ 小腸で消化吸収され、大腸への負担は少ない。
ただし過剰に摂ると腸を刺激することがあるため、炒め丼のように控えめな油で調理するのが適切。
特に、腸はたんぱく質不足に弱く、大腸粘膜のバリア機能が低下すると、腹痛が起こりやすくなったり便が不安定になりやすくなります。その点、豚肉は腸の粘膜を守り、炎症を抑えるための栄養素がバランスよく含まれた食材といえます。
2. 小松菜の栄養と大腸への働き
小松菜は低FODMAPの葉物野菜で、腸に優しく、かつ栄養価の高いスーパーフードです。
・カルシウム:野菜の中でトップクラス
→ 腸の蠕動(ぜんどう)運動の正常化に関与。
・βカロテン(抗酸化作用)
→ 大腸粘膜を酸化ストレスから守り、炎症予防に役立つ。
・ビタミンC
→ 粘膜免疫を強化。免疫の7割は腸に存在するとされており、腸の健康維持に直結。
・食物繊維(不溶性・水溶性のバランス)
→ 腸内環境を整え、便のかさをほどよく増やし、排便リズムを整える。
小松菜のポイントは「食物繊維が豊富なのに、FODMAPは低い」という点。
食物繊維は多すぎるとIBSの方には刺激になる場合がありますが、小松菜は繊維の質が柔らかく、消化しやすいため、腸に優しい野菜として知られています。
3. 赤パプリカの栄養と腸へのメリット
赤パプリカも低FODMAP、かつビタミンが非常に豊富です。
・ビタミンC:レモンの約2倍以上
→ 大腸の粘膜を守り、免疫力をサポート。
・βカロテン(抗酸化)
→ 大腸の炎症を抑える働き。
・カリウム
→ 便秘薬の副作用や脱水時に乱れやすい体内の電解質バランスを整える。
・食物繊維(適量)
→ 腸内細菌のエサとなる腸内発酵は起こしすぎないが、便通を改善。
特に、赤色が濃いほどポリフェノールが多く、抗酸化力が高いのが特徴。
酸化ストレスは大腸の粘膜障害やがんのリスクにも関与すると言われており、抗酸化野菜を取り入れることは腸の健康維持に非常に効果的です。
4. 卵の栄養と腸へのやさしさ
卵も低FODMAPで、IBSの方でも安心して食べられる優秀なたんぱく源です。
・必須アミノ酸をすべて含む完全栄養食
→ 腸粘膜の再生に必要なたんぱく質が効率よく摂取できる。
・脂質(レシチン)
→ 腸の保護膜を保ち、潤滑に働く。
・ビタミンD
→ 腸でのカルシウム吸収を助け、腸管の働きをサポート。
・ビタミンB群
→ エネルギー代謝を支え、便秘・下痢を招く代謝低下を予防。
特に、卵に含まれる「レシチン」は腸の粘膜を守る働きがあり、便がスムーズに通るのを助けることから、便秘傾向の方にも適した食材です。
■ 豚肉と彩り野菜の炒め丼が大腸にもたらす総合的なメリット
ここまで紹介した4つの食材を組み合わせることで、腸に対して次のような総合効果が期待できます。
① 大腸粘膜の修復と保護をサポート
豚肉・卵のたんぱく質
→ 粘膜の再生を促進
パプリカ・小松菜のビタミンC、βカロテン
→ 粘膜の酸化ストレスを抑える
② 腸内環境を整える
小松菜・パプリカの食物繊維が、腸の動きを程よく促進
ガスの原因になりにくい低FODMAP食材なので、IBSの人でも安心
③ 便の質を安定させる
卵のレシチンが便の通りをよくし、便秘を予防
FODMAPが低いため、水分が腸内に過剰に引き込まれにくく、下痢を防ぐ
④ 抗酸化作用で腸の炎症対策
赤パプリカと小松菜の抗酸化物質が大腸の酸化を抑制
腸粘膜の老化予防にも
⑤ 栄養バランスが非常に良い
タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維がバランスよく含まれる
腸だけでなく全身の健康維持に役立つ
■ 消化器症状に悩む方にもおすすめの腸にやさしい一皿
低FODMAP食の課題は「食べられるものが減ってつらい」という点ですが、今回の炒め丼は
・ボリュームがあり満足度が高い
・消化によい食材ばかり
・栄養価が高く健康的
・作りやすく、再現性も高い
と、腸に不安のある方でも食べやすいバランスの良いメニューです。
下痢や膨満感が強い日は、ご飯を少なめにして消化への負担を軽減したり、具材を細かく切り消化を助ける
など工夫するとより安心して食べられます。
■ まとめ:低FODMAP「豚肉と彩り野菜の炒め丼」は腸に優しい万能メニュー
「豚肉・小松菜・赤パプリカ・卵」
どれも低FODMAPで、消化にやさしく、腸粘膜の保護・修復・炎症対策に役立つ栄養素を豊富に含んでいます。
腸に不安を抱えている方でも安心して食べられる、まさに腸想いの一皿。
消化器症状に悩む方、食事制限で困っている方、健康的に腸を整えたい方にぜひ取り入れていただきたいメニューです。
食事は腸の健康を支える最も重要な柱のひとつ。
ぜひ日々の食生活に、低FODMAPで栄養バランスの整ったメニューを取り入れて、大腸の健康維持に役立ててみてください。


