2025年11月20日

こんにちは!札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニック事務長の高橋です!
「お寿司や刺身を食べた後、急にみぞおちが激しく痛み出した」「もしかしてアニサキスかも?」
—そんな経験や不安をお持ちではないでしょうか。新鮮な魚介類が身近な北海道、特に札幌では、誰もがアニサキスによる食中毒(アニサキス症)の危険と隣り合わせです。私たちは、この不安や疑問を抱える読者の方々に深く共感しています。
この記事では、近年増加傾向にあるアニサキス食中毒について、その正体、激しい腹痛の原因となるメカニズム、正確な診断方法、そして当院が最も得意とする内視鏡による治療法、さらに家庭で実践できる確実な予防法まで完全に網羅して徹底的に解説します。
この記事を読むと、アニサキスが体内でどのような悪さをしているのかが分かり、もしもの時に何をすべきか、そして最も重要な「どうすれば感染を防げるか」が明確に理解できます。
アニサキスによる激しい痛みに怯えたくない方、新鮮な魚介類を安全に楽しみたい方、そして「もしかしてアニサキス症かも?」と不安を感じている方は、ぜひ最後まで読んでみてください!
目次
1. 突然の激痛を引き起こすアニサキスとは?基本情報とメカニズム
海産魚介類を介してヒトの体内に入り、猛烈な激痛を引き起こすアニサキス。その正体を知ることは、効果的な予防と適切な対処の第一歩となります。
a. 寄生虫アニサキスの正体と知っておくべき生態
アニサキスは、線虫類に属する寄生虫の一種です。私たちが問題とするのは、その幼虫(第3期幼虫)であり、主にサバ、イカ、カツオ、サケ、イワシ、アジなどの魚介類に寄生しています。このアニサキスの幼虫は、体長が2cmから3cm、幅が0.5mmから1mm程度の白い糸状の姿をしており、肉眼でも確認が可能です。
アニサキスのライフサイクルは複雑であり、通常、クジラやイルカなどの海洋哺乳類を最終宿主とし、オキアミなどの甲殻類を経由して、私たちが食卓で目にする魚介類(中間宿主)の筋肉や内臓に寄生します。アニサキスは魚が生きている間は内臓にいることが多いですが、魚が死んで鮮度が落ちると、危険を察知して筋肉部分へ移動するという特性があります。この筋肉への移動こそが、刺身などの生食でアニサキス症を引き起こす原因となります。このアニサキスの生態を知っておくことは、食中毒予防に不可欠です。
b. 食中毒が起こるメカニズムと激痛の原因
ヒトがアニサキス症を発症するのは、アニサキス幼虫が寄生した魚介類を生食することで、生きた幼虫が体内に入ったときです。体内に入ったアニサキスは、ヒトの体内では生き続けることができないため、胃や腸の粘膜に潜り込もうと激しく穿入します。
このアニサキスが胃や腸の壁に突き刺さる行為、そしてアニサキスが分泌する物質に対して、ヒトの体が過敏な免疫反応(アレルギー反応)を起こすことが、激しい痛みの主な原因だと分かってきました。つまり、アニサキス症の激痛は、単なる物理的な痛みではなく、アニサキスに対するアレルギー性の炎症反応によって引き起こされているのです。この炎症反応によって、みぞおちや下腹部に間歇的(周期的に強くなったり弱くなったりする)な激痛が生じるのがアニサキス症の大きな特徴です。
2. 知っておきたいアニサキス食中毒の症状の種類と診断
アニサキスが穿入する場所によって、発症する症状や必要な対応が異なります。
a. 症状の種類と進行:胃アニサキス症と腸アニサキス症
アニサキス症は、穿入部位によって主に「胃アニサキス症」と「腸アニサキス症」に分けられます。それぞれの症状には明確な違いがあるため、自身の痛みがどちらに該当するかを知っておくことが重要です。
i. 胃アニサキス症の特徴
アニサキス症の中で最も発生頻度が高いのが胃アニサキス症です。症状は、原因となる魚介類を食べてから通常、数時間から十数時間後に現れます。主な症状は、みぞおち(上腹部)の激しい痛み、吐き気(悪心)、嘔吐です。私の知人の話では、夜にお刺身を食べた後、深夜に突然、今までに感じたことのないような差し込むような痛みに襲われ、一睡もできなかったそうです。この激痛は、胃壁にアニサキスが潜り込もうとしていること、そしてそのことに対する胃の粘膜のアレルギー反応が原因です。
ii. 腸アニサキス症の特徴
腸アニサキス症は、アニサキスが胃を通過し、小腸または大腸の壁に穿入することで発症します。症状は、魚介類を食べてから十数時間後から数日後(長い場合は数日後)に現れることが多いです。主な症状は、激しい下腹部痛、腹膜炎症状、吐き気、嘔吐です。胃アニサキス症よりも診断が難しく、重症化すると、まれに腸閉塞や腸穿孔といった重篤な合併症を引き起こす危険性があります。そのため、食後に激しい下腹部の痛みが続く場合は、数日経っていても迅速に医療機関を受診することが極めて重要です。
iii. 稀な腸管外アニサキス症とアレルギー
アニサキス症は、ごくまれに消化管を飛び越えて腸管外に寄生することもあります(腸管外アニサキス症)。また、アニサキスが原因となるアレルギー反応も知られています。これは、アニサキスが抗原となって起こるアレルギーで、蕁麻疹、血圧低下、呼吸困難などの症状が現れることがあります。重度の場合はアナフィラキシーショックに至る可能性もあるため、生の魚介類摂取後に体調に異常を感じた場合は、すぐに医療機関での対応が必要です。
b. 確実な診断と治療:内視鏡検査の重要性
アニサキス症の診断と治療において、内視鏡検査(胃カメラ)は最も確実で迅速な方法です。
i. 胃カメラ検査の圧倒的なメリット
胃アニサキス症が疑われる場合、胃カメラ検査は診断と治療を同時に行うことができる圧倒的なメリットがあります。胃カメラで食道や胃の内部を直接観察することで、胃粘膜に穿入しようとしているアニサキスの幼虫(多くの場合、白い糸状の寄生虫)を特定できます。さらに、その場で内視鏡の鉗子(かんし)を使ってアニサキスを物理的に摘出することが可能です。私が知る限り、アニサキスを内視鏡で摘出した患者様は、摘出した直後から長引いていた激しい痛みが劇的に改善し、数分で笑顔を取り戻されることが非常に多いです。これが内視鏡によるアニサキス治療の最大の強みであり、患者様への負担を最小限に抑える方法です。
ii. 腸アニサキス症の疑いがある場合の対応
当院が得意とする大腸カメラ検査も、腸アニサキス症の診断において重要な役割を果たすことがあります。腸アニサキス症は胃アニサキス症よりも診断が難しく、内視鏡での摘出が困難な場合や、幼虫がすでに死んでいる場合も多いです。しかし、激しい下腹部痛が続く場合、腸の炎症の程度を確認したり、腸閉塞などの合併症が起こっていないかを確認したりするため、大腸カメラが用いられることがあります。特に大腸カメラ検査を得意とする当クリニックでは、もし腸アニサキス症の疑いで下腹部痛が生じた場合でも、迅速かつ正確な検査体制を整えています。
3. 激しい痛みを即座に解消するアニサキス食中毒の治療法
アニサキス症は、適切な治療を受ければ迅速に回復する食中毒です。
a. 主な治療方法:内視鏡による摘出と対症療法
現在、アニサキスを直接駆虫できる有効な治療薬は確認されていません。そのため、治療は基本的に以下の方法によって行われます。
内視鏡による摘出(胃アニサキス症の場合):
胃カメラを用いて、胃粘膜に潜り込んでいるアニサキス幼虫を鉗子でつかみ、摘出します。これが最も一般的かつ効果的な治療法であり、痛みを即座に解消します。
対症療法(腸アニサキス症の場合):
腸アニサキス症の場合、内視鏡での摘出が難しいため、痛み止めや制吐き気薬などの薬を使って症状を抑えます。多くの場合、アニサキスはヒトの体内では長く生きられず、数日から1週間程度で死滅するため、症状は徐々に治まります。
しかし、腸閉塞や腸穿孔といった合併症を引き起こしている場合は、入院や外科的な手術が必要になることがあります。
b. 内視鏡による摘出のメリットとデメリット
アニサキス症の治療における内視鏡での摘出は、患者様にとって大きな利点がありますが、知っておくべき注意点もあります。
i. 内視鏡による摘出のメリット
内視鏡による摘出のメリットは、主に以下の4点です。
痛みの即時解消: アニサキスを物理的に除去した直後から、炎症反応が鎮まり、激しい痛みが解消します。患者様は数分で苦痛から解放されます。
確実な病因の除去: 内視鏡の鉗子によってアニサキス本体を体外へ除去するため、痛みの原因物質が体内に残る心配が一切ありません。
診断の確定: 内視鏡で実際にアニサキスを視認し摘出することで、アニサキス症の診断を確定できます。これは、他の腹痛の原因との鑑別にも役立ちます。
入院の回避: 薬で症状が治まるのを待つよりも、内視鏡で摘出すれば短時間で済むため、多くの場合、入院の必要がなくなります。
ii. 内視鏡による摘出のデメリット
内視鏡による摘出にはデメリットも存在します。
適応部位の制限: 内視鏡で直接摘出できるのは、主に胃アニサキス症でアニサキスが胃の壁に穿入している場合です。腸アニサキス症の場合は、内視鏡が届きにくく、摘出が困難になることがほとんどです。
検査自体の負担: 鎮静剤を使用するとはいえ、内視鏡検査自体が体への負担となる可能性はゼロではありません。ただし、当院では麻酔(鎮静剤)を使用した苦痛の少ない内視鏡検査を提供しており、この負担を最小限に抑えています。
時間的な制約: アニサキス症が疑われる場合、速やかに医療機関を受診し、内視鏡検査を受ける必要があります。深夜や休日など、内視鏡検査がすぐに受けられない状況では、痛みが長引く可能性があります。
アニサキスがすでに死んでいる場合: 内視鏡検査時にアニサキスがすでに死滅している場合、痛みの原因である寄生虫を摘出しても、痛みの改善が見られないことがあります。この場合は、アレルギー反応の治療として薬物療法が主体となります。
4. 家庭でできるアニサキス食中毒の確実な予防策と対策
アニサキス症は、予防策を知り、正しく実行することで確実に防ぐことができます。
a. 家庭で実践できるアニサキスの死滅方法
アニサキスの幼虫は、特定の条件を満たした加熱または冷凍処理によって死滅します。これが最も確実な予防法です。
i. 冷凍処理の適切な条件
アニサキスは低温に比較的強い寄生虫ですが、適切な冷凍処理を施すことで死滅させることが可能です。厚生労働省は、食材の中心温度を「-20℃以下で24時間以上」冷凍することを推奨しています。これは、家庭用の冷凍庫でも十分に達成可能な条件です。例えば、自分で釣った魚や、一度に食べきれない刺身用の魚介類を長期保存したい場合は、この条件で冷凍処理を行うことで、アニサキスの感染リスクを大幅に下げることができます。
ii. 加熱処理の適切な条件
アニサキスは熱に弱いという性質があります。加熱処理によってアニサキスを死滅させるための条件は、食品の「中心温度を60℃以上にして1分間以上加熱」することです。煮たり、焼いたり、揚げたりする調理法は、アニサキスの予防に非常に有効です。私が以前、新鮮なサバを捌いた際、念のため加熱調理で食べた経験があります。サバのようにアニサキスの寄生が多い魚介類は、生で食べるよりも、加熱して食べるのが賢明な予防策と言えます。十分に火を通した状態で提供されている料理であれば、アニサキス症の心配は基本的にありません。
b. 鮮度の管理と目視確認の重要性
加熱や冷凍をせずに生食する場合、鮮度の管理と目視確認がアニサキス****予防の鍵となります。
アニサキスの幼虫は、魚が生きている間は主に内臓にいますが、魚が死ぬと筋肉部分へ移動し始めます。そのため、魚を購入する際は、できるだけ鮮度の良いものを選び、購入後はすぐに内臓を除去することが非常に重要です。スーパーや魚屋で「刺身用」と表示されているものは、適切に処理されている可能性が高いですが、自分で魚を捌く場合は、この鮮度管理と内臓の除去を迅速に行うことが予防につながります。
また、アニサキスは白い糸状で長さが数cmあるため、目視で確認することが可能です。刺身を調理する際や食べる前に、白いアニサキス幼虫がいないか、光に透かしたり、まな板の上に広げたりして丁寧に目視チェックすることで、アニサキスを除去することができます。ただし、アニサキスが深く穿入している場合や、数が少ない場合は目視だけでは見落とす可能性があることも知っておきましょう。
5. 知っておきたいアニサキス食中毒に関するQ&A
アニサキスに関して、よくある疑問にお答えします。
a. 感染しやすいアニサキスの主な宿主(魚介類)
アニサキスの幼虫が寄生している可能性が高い魚介類、つまりアニサキス症の主な原因となる魚介類には、以下のようなものが挙げられます。
サバ: アニサキスの寄生率が非常に高いことで知られています。
イカ: イカの刺身による感染事例も多く報告されています。
カツオ: 漁獲される地域や時期によって寄生状況が異なります。
サケ・マス: 特に天然のサケ・マスは注意が必要です。
イワシ、サンマ、アジ: 大衆的な魚介類にもアニサキスは多く見られます。
これらの魚介類を生食する際は、特に冷凍や加熱といった予防策を徹底することが賢明です。一方、養殖のマグロやカツオ、淡水魚などはアニサキスが寄生する可能性は低いとされていますが、完全にリスクがないわけではありません。
b. 醤油やワサビはアニサキスに効果があるか?
新鮮な魚介類を生食する際に、醤油やワサビをたっぷりつけて食べればアニサキスが死ぬ、と思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、残念ながら、一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、そして醤油やワサビを大量に使用しても、アニサキス幼虫を死滅させる効果はありません。
これは、アニサキスの幼虫が非常に強力な生命力を持っているためです。アニサキスを確実に死滅させるには、前述したように「中心温度60℃で1分以上の加熱」または「-20℃以下で24時間以上の冷凍」という適切な物理的処理が必要となります。醤油やワサビは風味を増すための調味料であり、食中毒の予防策にはならないことを覚えておく必要があります。
6. まとめ
アニサキスによる食中毒(アニサキス症)は、みぞおちや下腹部に激しい痛みをもたらしますが、予防法や適切な対処法を知っていれば、過度に恐れる必要はありません。
重要な予防策は、魚介類の冷凍処理(-20℃以下で24時間以上)または加熱処理(中心温度60℃で1分以上)を徹底すること、そして鮮度の良い魚を選び、内臓をすぐに除去することです。
もし生の魚介類を食べた後に、今までに経験したことのない激しい腹痛、吐き気、嘔吐に見舞われた場合は、すぐに消化器内科を受診し、内視鏡検査を検討してください。特に胃アニサキス症であれば、胃カメラでアニサキスを摘出することで、痛みを即座に解消できます。
大腸カメラ検査を得意とする札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニックは、アニサキス症をはじめとする消化器系の痛みやお悩みに対し、迅速かつ正確な診断と治療を提供しています。
本記事をお読みいただきありがとうございます。何かご不明な点や、お悩みがございましたら、札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニックまでお気軽にご相談ください。


