孤独のカメラ第4話ーー深夜ラーメンの罪深き旨さ|札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニック|札幌市大通駅徒歩30秒の内視鏡検査・消化器内科

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孤独のカメラ第4話ーー深夜ラーメンの罪深き旨さ

孤独のカメラ第4話ーー深夜ラーメンの罪深き旨さ|札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニック|札幌市大通駅徒歩30秒の内視鏡検査・消化器内科

         

2026年3月14日

食べ過ぎの代償 ― 胃之頭、逆流性食道炎で胃カメラ検査へ

仕事が終わった。 時計の針は21時を回っている。

……予定より長引いてしまった。
ふっと、緊張の糸が切れる。 それと同時に、腹の底から突き上げるような衝動が襲ってきた。


(ポン、ポン、ポンッ)


腹が、減った。


店を探そう。 だが、この時間だ。開いている店は限られている。 夜の街を彷徨う五郎。ふと、路地裏に揺れる赤い暖簾が目に留まった。


「ラーメンか……」


今の胃袋には、少し重いかもしれない。 明日の仕事も早い。

だが……この暖簾の揺れ方は、俺を呼んでいる。


「よし、入ろう」

深夜の誘惑

店内は、使い込まれたカウンターが数席。 換気扇が回る音だけが、深夜の静寂を埋めている。
壁のお品書きを睨む。 味噌、醤油、チャーシュー麺……。 そして、隅に見つけてしまった。


「半チャーハンセット」


……これはいかんな。 この時間にセットは、明らかなオーバーワークだ。 分かっている。分かっているんだが……。


「すみません。味噌ラーメン、あと半チャーハンセットで」


口が勝手に動いた。 欲望が理性を追い越していく。

至福と、静かなる異変

数分後。 もうもうと立ち込める湯気の向こうから、そいつは現れた。


「ほう……いい景色だ」


まずはスープ。 ずずっ。


「うん。濃厚だ。 白味噌の甘みの奥に、ニンニクのパンチ。 この時間に食うには、あまりに罪深い味だ」


続いて麺を。 ずるっ、ずるるっ。


「このコシ。この縮れ具合。 スープを余すことなく連れてくる。 いいぞ、いいぞ。深夜のラーメン、最高じゃないか」


そして、黄金色のチャーハン。 ぱくり。
「……完璧だ。 ラーメンとチャーハン。この組み合わせを考えた人間は天才か。 炭水化物と脂の波状攻撃。俺の胃袋が、歓喜の声を上げている」


気づけば、丼の底が見えていた。


「ふぅ……。食った、食った」


腹は満たされた。 いや、満たされすぎた。 これが「終わりの始まり」であることを、この時の俺はまだ知らない。

胸の奥の警告

店を出て数分。夜風が頬をなでる。 ……ん? 胸のあたりに、妙な違和感がある。


「なんだ……? 焼けるような感じがする」


気のせいかと思い、家路を急ぐ。 だがその夜。 布団の中で、俺は跳ね起きた。


「……うっ」


熱い。胸の奥がじりじりと熱い。 喉の奥まで、酸っぱいものがせり上がってくる。


「これは……逆流、か」


横になると、さらに苦しい。 あの時、セットにしたのがトドメだったか。 深夜の味噌ラーメン。その「魔力」の代償は、想像以上に重かった。

症状は翌日も続いた。

胸焼け、喉の違和感、不意にくるゲップ。 美味しいものを美味しく食べられない。これは、独り身の俺にとっては死活問題だ。


「ちゃんと診てもらうか」


訪れたのは、以前も世話になっているクリニック。 医師は、俺の告白を聞いて穏やかに告げた。


「症状からして、『逆流性食道炎』の可能性が高いですね。 食べ過ぎ、脂っこいもの、夜遅い食事、そして食後すぐに横になる……。 心当たりは?」


「……ありすぎます」


苦笑いするしかない。

「念のため、胃カメラで確認しておきましょう」




「鎮静剤を使うので、眠っている間に終わりますよ」


まな板の上の鯉、ならぬ、検査台の上の五郎だ。 意識が遠のいていく……。


……。 …………。


「胃之頭さん、終わりましたよ」
気づいた時には、すべてが終わっていた。 モニターには、自分の食道と胃の、生々しい「内景」が映し出されている。


「ここです。食道の入り口が少し赤くなっていますね。 やはり、逆流性食道炎です。 でも、幸い重症ではありません。お薬と生活習慣の改善で十分治ります」


「……そうですか」


画面の中の自分の内臓を見て、不思議な愛着が湧いた。 俺は、この小さな「袋」に、今までどれほどの幸福を詰め込んできただろうか。

クリニックを出ると、空はどこまでも青かった。

「食べることは、生きることだ。 それは変わらない」
だが、俺は自分の体を、ただの「燃料タンク」のように扱っていなかったか。


「健康であってこそ、食事は輝く。 深夜のラーメン……。 ……たまには、休ませてやるのも優しさか」


胃と腸。 言葉を交わすことはできないが、彼らは俺の人生の相棒だ。 たまには点検し、労わってやらなければならない。


胃薬を一錠。 今日は、温かいお粥でも食べて帰ろうか。


「いや、お粥だけだと少し寂しいな。 梅干しと、少しの出汁巻き卵……。 よし、それで行こう」
胃を整え、腸を整える。 そうしてまた、最高の「次の一口」へ向かうために。
胃之頭五郎の、食の探求はこれからも続いていく。 ただし、これからはもう少し、自分の体と相談しながら。

最後にーー孤独のカメラは続いていく

一話ごとに完結しながら、静かに積み重ねられていく物語がある。

『孤独のカメラ』もまた、
一度きりで終わるものではない。

胃を整え、腸を整える。

そうしてまた
何の変哲もない――

だが、かけがえのない
日常の食事へ戻っていく。

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