2025年5月22日


札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニック院長の福田遼です。

皆様、日々の健康管理はいかがでしょうか。今回は、多くの方が経験されたことがあるであろう「お酒を飲むと下痢になる」という現象について、医学的な観点から詳しくお話ししたいと思います。

そして、それが私たちの腸の健康とどのように関わっているのか、そしてなぜ定期的な大腸の検査が重要なのかについてもお伝えできれば幸いです。

目次
お酒を飲むとなぜ下痢になるのか?知られざるメカニズム

お酒を飲んだ翌日などに、下痢をしてしまう…という経験はありませんか?

これは決して珍しいことではなく、アルコールが消化管に様々な影響を与えることで起こります。お酒を飲むことによる下痢には、いくつかのメカニズムが関与しています。

まず一つは、アルコールを大量に摂取した場合に起こる「浸透圧性の下痢」です。アルコールを大量に飲むと、水分や電解質(ナトリウムなど)が腸管で十分に吸収されなくなります。これにより、腸の中の浸透圧が高まり、便に水分が多く含まれた状態になって、下痢を引き起こします。これは、お酒を飲み過ぎた翌日にお腹を壊してしまう原因として可能性が高いとされています。

もう一つは、長期にわたる過剰なアルコール摂取が原因で起こる下痢です。この場合、アルコールが膵臓の機能などを低下させ、消化液や胆汁の分泌量が減少することが原因となります。その結果、脂質やタンパク質がうまく分解・吸収されなくなり、便に過剰な脂肪が含まれる「脂肪便」と呼ばれる状態になることがあります。

さらに、アルコールは私たちの腸内環境、つまり「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」にも大きな影響を与えます。腸内には100種類以上の細菌が共存し、「腸内フローラ」と呼ばれるバランスを保っています。この腸内フローラは、免疫機能の調整、栄養素の吸収、腸壁のバリア機能の維持など、健康維持に不可欠な重要な役割を担っています。

しかし、常習的な飲酒は、この腸内フローラのバランスを崩すことが分かっています。研究によると、アルコールを分解する過程で産生される「アセトアルデヒド」などの物質が、腸内の善玉菌、特にビフィズス菌や酪酸菌などを減少させて、腸内環境を悪化させると言われています。

これらのことから、「お酒を飲むと下痢になる」という現象は、アルコールの利尿作用や腸への直接的な刺激だけでなく、腸内環境の乱れや自律神経への影響など、様々な要因が複雑に絡み合って引き起こされていることが分かります。



お酒と大腸ポリープ、そして大腸がんのリスク

実はアルコールは下痢を引き起こすだけでなく、大腸がんのリスクにもなります。

私たちのクリニックでは、毎日のように多くの方の大腸内視鏡検査を行っていますが、常習的に飲酒される患者さんには、大腸ポリープができているケースが非常に多いと感じています。

これは、前述したアルコール分解過程で産生される「アセトアルデヒド」などの有害物質や腸内フローラの乱れが大腸ポリープや大腸がんのリスク因子になり得ると考えられているためです。

大腸がんの発症には、加齢、家族歴、食生活(赤身肉や加工肉の過剰摂取、食物繊維不足)、喫煙、飲酒、肥満、運動不足など、様々な要因が関与しています。飲酒もその重要なリスク要因の一つとして挙げられています。近年では、たとえ少量であってもアルコール摂取によってがんや心血管系の病気のリスクが上昇するという研究結果も出てきています。



下痢や便通異常、血便…体のサインを見逃さないことの重要性

便通異常が続く場合は注意が必要です。

なぜなら、これらの症状が、大腸ポリープや大腸がん、あるいは炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)、大腸憩室症、虚血性腸炎といった、より深刻な病気のサインである可能性があるからです。

特に厄介なのは、大腸がんは初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多いという点です。

進行すると、下痢や便秘、腹痛といった症状が現れることもありますが、できれば症状が出る前に発見することが望ましいことは言うまでもありません。早期発見・早期治療が、がんの生存率を高め、治療による身体的な負担を小さくするためにも非常に重要だからです。

大腸は、自覚症状が出にくい臓器です。そのため、「自分は健康だから大丈夫」と思い込まず、体の些細なサインを見逃さずに、定期的に検査を受けることが非常に重要になります。



大腸の健康をチェックする方法:便潜血検査と大腸内視鏡検査

大腸の検査には、「便潜血検査」や「大腸内視鏡検査」があります。

「便潜血検査」は、便の中に微量の血液が混じっているかを調べる検査です。

厚生労働省は40歳以上の方に年1回の便潜血検査を推奨しており、大腸がんによる死亡率を減らす効果があるという科学的根拠も示されています。

ただし、便潜血検査にも限界があります。大腸がんや大腸ポリープがあっても、常に出血しているわけではないため、便潜血検査で陰性だったとしても、がんが隠れている可能性は否定できません。

便潜血検査で陽性となった場合は、必ず精密検査を受ける必要があります。ここで最も推奨される精密検査が、「大腸内視鏡検査(大腸カメラ)」です。

大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡スコープを挿入し、大腸の粘膜を直接観察できる最も有効な検査です。便潜血検査のような間接的な方法とは異なり、微小な早期大腸がんや小さなポリープも見つけやすく、発見率が高いとされています。

さらに、大腸内視鏡検査の最大のメリットの一つは、検査中にポリープが見つかった場合、その場で切除できることです。大腸ポリープの中には、将来がんになる可能性があるもの(腺腫)があり、これを切除することで大腸がんの発生そのものを予防することができます。

また、大腸内視鏡検査では、大腸がんやポリープ以外にも、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)、大腸憩室症、虚血性腸炎、痔など、様々な大腸の病気を診断することが可能です。

血便がある方や、過去に大腸ポリープを切除した経験がある方には、便潜血検査よりも大腸内視鏡検査が推奨されます。



安心して大腸カメラを受けていただくために:当院の取り組み

大腸カメラに不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

特に、インターネットなどを見ていると、大腸カメラは痛い、苦しいといった情報に触れる機会も少なくないかと思います。

当院では、患者様にできる限り安心して、そして快適に大腸内視鏡検査を受けていただけるよう、様々な工夫と配慮を行っております。

1.苦痛の少ない検査への徹底的な配慮

「大腸カメラは痛いのではないか?」という不安を軽減するために、当院では鎮静剤を用いた「無痛大腸カメラ検査」を提供しています。

鎮静剤を使用することで、ほとんど眠っているか、うとうとした状態で検査を受けることができ、検査による苦痛や不快感を大幅に軽減することが可能です。

2.胃カメラと大腸カメラの同日検査が可能
胃の不調と大腸の不調、どちらも気になるという方もいらっしゃるかもしれません。

胃カメラと大腸カメラは、それぞれ食道・胃・十二指腸、大腸といった消化管を観察する検査ですが、検査前の食事制限や時間的な拘束といった準備に共通点が多くあります。

当院では、患者様の負担を軽減するため、胃カメラと大腸カメラの同日検査を実施できる体制を整えています。

これにより、食事制限や検査のための時間を1日で済ませることができ、患者様の時間的な負担や身体的な準備の負担を大幅に軽減することが可能です。

3.アクセス抜群の立地

当院は札幌市の中心部、大通駅からすぐの場所にあります。

大通駅の14Bまたは15番出口から出てすぐのビル内に位置しているため、雨や雪の日でもほとんど濡れることなくクリニックにお越しいただけます。



まとめ:健康な腸を保つために

アルコールは腸内環境や消化機能に様々な影響を与えます。

常習的な飲酒は、大腸ポリープや大腸がんのリスクを高める可能性も示唆されています。

下痢や便通異常、腹痛などが続く場合、あるいは血便が見られた場合は、決して軽視せず、体の重要なサインとして受け止めて、早めに医療機関を受診することが大切です。

大腸がんは早期には症状が出にくい病気ですが、早期に発見できれば治癒率が高く、治療の負担も少なく済みます。

そのため、40歳を過ぎたら便潜血検査による定期的な検診を受けることが推奨されていますが、便潜血検査で陽性となった場合は、必ず精密検査である大腸内視鏡検査を受けるようにしてください。

また、便潜血検査が陰性でも気になる症状がある方や、より精密な検査を受けたい方には、大腸内視鏡検査自体を定期的に受けることが、大腸がんの早期発見や予防、そして他の疾患の発見に繋がるため有効です。

当院では、患者様に寄り添った丁寧な診療と、苦痛に配慮した質の高い内視鏡検査を提供しています。大腸の健康に不安がある方、お酒を飲む機会が多くて心配な方、便通異常が気になる方、あるいは過去に検査でつらい経験をしたことがある方も、ぜひ一度ご相談ください。皆様の不安を解消し、健康な毎日をサポートできるよう、スタッフ一同努めてまいります。

皆様のご来院を心よりお待ちしております。


大腸内視鏡検査は札幌大通胃と大腸の内視鏡クリニックがおすすめです!


