2024年3月17日
1. ピロリ菌とは何か
ピロリ菌とは、ヒトの胃粘膜に生息する細菌の一つであり、学名をヘリコバクター・ピロリと言います。こちらの菌は胃酸に強く、胃の中という厳しい環境で生き延びることが出来ます。内視鏡にて感染が確認されると、抗生物質による除菌治療が行われ、その際には2週間ほどの治療期間が必要な場合があります。
1.1. ピロリ菌の特徴
ピロリ菌は形状がらせん状で、これが胃粘膜にしっかりと固定することを可能にしています。また、鞭毛を持っていて移動能力に優れ、胃酸を中和する尿素酵素を分泌することも特徴の一つです。そのため、本来は胃酸で死滅すべき細菌が、健康な胃でも生存・繁殖することができます。
この菌は人間にとって有害な存在であり、感染すると胃腸疾患の原因となることが多いです。幼少期に感染することが多く、一度感染すると自然には除去されにくいです。強い生命力とヒトに対する侵害性を持つ細菌であり、その存在を知り対策を立てることが大切です。
1.2. ピロリ菌が体に及ぼす影響
ピロリ菌が体に及ぼす影響は大きく、胃や十二指腸に潰瘍を引き起こすことがあります。この菌が胃粘膜の防御機能を破壊し、胃酸による直接的な粘膜の損傷を招くからです。また、胃腸疾患だけではなく、胃がんのリスクも上げることが知られています。
特に、ピロリ菌が引き起こす胃の炎症(胃炎)は、進行すると胃粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、胃がんに至る可能性があります。更に、摂取した食物の消化を促進する役割をもつ胃酸の分泌が乱れることで、食事後の不快感や胸やけなどの症状を示すこともあります。
1.3. 感染経路と治療
ピロリ菌の感染経路は大まかに分けると2つあります。一つは口から口への感染、もう一つは汚染された水や食物を介しての感染です。具体的には、家族内での感染が多いとされており、感染者の唾液を介して他の家族が感染することが一般的で、また、衛生状態が悪い地域での飲食による感染も見られます。
ピロリ菌の検査には血液検査や尿検査等様々なものがありますが、確定診断をするためには胃カメラを行わなければならず、内視鏡にて診断を確定し、その後に内服薬での治療を行います。
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2. ピロリ菌と胃腸疾患の関連性
胃腸疾患といえば、胃潰瘍や胃がん、胃酸過多といった症状が主に挙げられますが、これらの病気の発症に密接な関係があるのがピロリ菌です。ピロリ菌は胃の粘膜に存在し、その活動が胃腸疾患の原因となることがあるのです。ピロリ菌は発見当初、問題とされなかったのですが、その後の研究によって胃腸疾患に関与することが分かってきました。
2.1. ピロリ菌と胃潰瘍の関連性
ピロリ菌は胃潰瘍の発症に深く関与していることが証明されています。胃潰瘍は、胃酸によって傷ついた胃の粘膜が癒えずに、次第に深くなっていく病気です。何も問題なく機能していた胃の粘膜が被害を受けやすい状態になる一因として、ピロリ菌が寄与していると考えられています。具体的には、ピロリ菌が出す毒素によって胃の粘膜がダメージを受け、その結果、胃潰瘍を発症することがあります。このような事情から、胃潰瘍の治療の一環として、ピロリ菌の除菌治療も行われるのが一般的です。。
2.2. ピロリ菌と胃がんのリスク
胃がんは日本のがん死亡原因の上位を占める病気であり、ピロリ菌がその発症リスクを高めることが示唆されています。長期にわたり胃の粘膜に慢性的な炎症を引き起こすピロリ菌は、その結果、胃の細胞が何度も再生する過程で細胞の異常が生じやすい環境を作り出すとされています。これが胃がんの発症を招くと、研究者たちは指摘します。また、ピロリ菌感染者の中でも特に発がんリスクが高まるとされる胃粘膜萎縮や胃腺ポリープの原因ともなります。
2.3. ピロリ菌と胃酸過多の関連性
ピロリ菌が引き起こす胃酸過多も、胃病の一つであり、これが原因で多くの患者が胃炎や胃潰瘍を発症します。ピロリ菌は、胃の粘膜を守るためのビクリンという物質を減少させ、胃酸が直接胃壁に影響を及ぼす環境を作り出します。この状況下では胃酸が過剰に分泌され、胃痛や胃潰瘍、胃炎を引き起こす可能性が高まるのです。したがって、胃酸過多の治療にもピロリ菌の除菌が重視される傾向にあります。
3. ピロリ菌の検査方法
ピロリ菌は、胃の粘膜に生息して慢性的な胃炎を引き起こす微生物です。この菌が存在するか否かを確認する検査法には、血液検査、呼吸検査、尿検査、そして便検査といった方法があります。病状や患者さんの体調により選択される検査方法は異なるのですが、すべての検査が重要な役割を担っています。今回はそれぞれの検査方法について詳しく説明していきます。
3.1. 血液検査、尿検査
ピロリ菌に対する抗体が血液・尿中に存在するか否かを判断する方法です。ピロリ菌が体内に侵入すると、免疫システムは菌に対抗するため抗体を作り出し、これが血液中に存在します。この抗体が確認できれば、ピロリ菌が体内に存在すると考えられます。ただし、一度ピロリ菌に感染したことがある人でも抗体は残存するため、現在感染中であるかは判断しきれない場合もあります。そのため、「感染の疑いがある」「過去に感染したことがある」という情報を得るために主に活用されます。
3.2. 呼吸検査
呼吸検査は、ピロリ菌が体内に存在しているかを確認する非侵襲的な調査法です。この方法は、特別な飲み物を摂取後、数分間待った後で呼吸ガスを測定します。ピロリ菌は尿素を分解し、その結果生じる二酸化炭素を呼気中に排出します。これを確認することで、現在ピロリ菌が存在しているかどうかを判断することが可能です。呼吸検査は痛みを伴わず、手軽に行うことができるため、実施しやすい検査法と言えます。
3.3. 便検査
便検査は、便中にピロリ菌の成分が存在するか否かを調べる方法です。胃や十二指腸に存在するピロリ菌が腸を通過する際、その一部が便とともに排出されます。この時便中に見られるピロリ菌の成分を検査することで、ピロリ菌の存在を確認できます。これにより便からピロリ菌の有無を検出し、治療方針を決定するのです。便検査は家庭でも可能で、病院へ持ち込んで検査する形になります。血液検査や呼吸検査と違って、直接的にピロリ菌の有無を検出する手法なので高い精度を誇ります。
4. 内視鏡検査とは何か
内視鏡検査は、身体の内部を調査・診断するのに使われる検査です。ピロリ菌に感染した胃は、胃潰瘍や胃癌の発生リスクがある為、胃カメラでの検査が必要です。管状の器具である内視鏡を使って、体内の働きを直接観察し、異常があるかどうかをチェックします。内視鏡にはカメラと小さな電灯が取り付けられており、身体の内部を照らしながら映像を取得し、医師が詳細に観察します。この検査は、胃や大腸、食道、胆道など、身体の多くの部分で実施することが可能で、病気の診断または治療に重要な役割を果たします。
4.1. 内視鏡検査の種類
内視鏡検査にはさまざまな種類があります。主なものに胃内視鏡、大腸内視鏡、胆管内視鏡、上部消化管内視鏡、気管支鏡、膀胱鏡などがあります。これらは各器官に対応したもので、それぞれの状況に応じて使用されます。例えば、胃の異常を調べる際には胃内視鏡を、大腸の問題を診断するには大腸内視鏡を、そして胆管のトラブルに対応するのは胆管内視鏡です。また、上部消化管内視鏡は食道から小腸までを対象とし、膀胱鏡は膀胱の問題を調査します。
4.2. 内視鏡検査の手順
内視鏡検査は、まず患者が採尿や採血などの前処理を行うことから始まります。その後、適切な内視鏡を選択し、使用部位に合わせて消毒したり、局所麻酔を施したりします。そして、内視鏡を挿入し、特定の組織や管を観察します。画像はモニターに映し出され、医師が評価します。場合によっては細胞を採取するためのバイオプシーや、異常部位の治療を行う場合もあります。検査が終了したら、しっかりと後処理をし、その後の体調変化などを観察していきます。
4.3. 内視鏡検査のリスクと注意点
内視鏡検査には、何らかのリスクが伴う事もあります。例えば、内視鏡の挿入による出血や感染、麻酔によるアレルギー反応などが考えられます。また、体調変化や痛みが続く場合、検査腫瘍や炎症の可能性もあります。そのため、適切な準備と後処理、きちんとしたリスク説明と対処法の理解が重要です。また、空腹時に行うことが多いので、前日の飲食や服薬についても医師ときちんと相談することが大切です。定期的にフォローアップを行い、結果をしっかりと理解することも欠かせません。
5. ピロリ菌の内視鏡検査
ピロリ菌の内視鏡検査は、胃や十二指腸に存在するピロリ菌の有無を調べるための方法です。食事や飲み物を通じて感染するこの菌は、我々の胃内に生息し、不快な胃痛や胃潰瘍、さらには胃がんといった疾患を引き起こす可能性があります。このため、症状がある場合や、家族内でのピロリ菌感染者がいる場合は、積極的に胃の内視鏡検査を受けることを推奨します。
5.1. 内視鏡検査で確認できるピロリ菌症状
内視鏡検査では、ピロリ菌によって引き起こされる様々な症状を確認することができます。症状には、胃の内部に生じる炎症や赤み、腫れ、胃潰瘍の存在、粘膜の萎縮などがあります。
また、ピロリ菌が引き起こす胃痛や胃不快感、食後の満腹感や吐き気などの自覚症状がある場合、内視鏡検査によって胃の細胞の状態を直接観察し、原因を確認することができます。検査結果によっては、ピロリ菌によって引き起こされた胃炎や胃潰瘍、胃がんの初期段階を発見することもあります。早期発見することで治療の選択肢が広がり、より良い予後を期待することができます。
5.2. 検査結果について、
初診の患者様の場合、まず内視鏡画像や検査データを基に、胃の健康状態が評価されます。胃酸が過剰に分泌されている場合や、胃の壁が赤く腫れている場合は、ピロリ菌による感染が疑われます。また、胃潰瘍や胃がんなどの症状が見られた場合も、ピロリ菌の有無を調べるための検体を採取することがあります。これらの結果により、ピロリ菌の存在とその症状の関連性が確認されます。
5.3. 検査後のフォローアップ
内視鏡検査後、病理検査結果が出るまで通常1週間から2週間程度かかります。ピロリ菌が確認された場合、医師は抗生物質とプロトンポンプ阻害剤という胃酸分泌を抑制する薬の組み合わせによる除菌治療を行います。除菌治療後、再度ピロリ菌検査を行うことで、ピロリ菌の除菌が確認され、治療効果が評価されます。症状が改善しない場合や再発した場合には、その都度、医師と相談しながら適切な治療を選択し、フォローアップを続けていきます。
6. ピロリ菌の治療法
ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍など様々な胃の病気を引き起こす菌です。この細菌は、人間の胃の中で生息し、特に胃酸の強い環境下でも生きていくことができます。しかし、これらの強靭な細菌に対しても、今日の医学は効果的な治療法を多数確立しています。特に代表的なものが抗生物質や酸制制剤の使用です。
6.1. 抗生物質を用いた治療
ピロリ菌治療に使用される抗生物質は主にアモキシシリンやクラリスロマイシンといったものです。これらの抗生物質はピロリ菌の細胞壁を破壊し、菌の生育を抑制していきます。しかし、抗生物質による治療には問題があります。それは、耐性菌を生んでしまう可能性があることです。耐性菌が増えると、それに対する有効な抗生物質がなくなり、治療が難しくなる可能性があります。したがって、抗生物質の適切な使用が強く求められています。
6.2. 酸制制剤による治療
次に、酸を抑制する薬、つまり酸制制剤について説明します。ピロリ菌は胃酸が好みの生息環境ですが、酸制制剤によって胃酸の分泌を押さえることで、細菌の生育環境を悪化させるのです。代表的な酸制制剤には、プロトンポンプ阻害薬(PPI)があります。これは胃酸の分泌を抑える作用を持ち、ピロリ菌の生活環境を壊します。しかしこの方法も、長期間にわたる服用による副作用の可能性があるため、医師の指導のもとに使用するべきです。
7. ピロリ菌の予防法
ピロリ菌は、成人になってから感染する事は少ないですが、胃酸分泌能の低い3歳以下の幼児に感染させてしまう可能性があります。そのため、ピロリ菌の感染を未然に防ぐことは、健康的な身体を維持する上で極めて重要となります。ここでは、ピロリ菌の感染を防ぐために注目すべき三つの主要なポイントを紹介していきます。それは「飲食の注意」、「手洗いの徹底」、「定期的な健康診断」の三つです。これらに気を付けることで、ピロリ菌の予防に大きく寄与します。
7.1. 飲食の注意点
まず一つ目は「飲食の注意点」です。ピロリ菌は不衛生な飲食生活から体内に入ることが多いです。そのため、食事の取り方には十分に気をつける必要があります。特に外食に際しては、衛生管理が徹底している信頼できるお店で飲食するように心掛けてください。
7.2. 手洗いの徹底
次に、手洗いの徹底も重要な予防策です。ピロリ菌は口から体内に入りますが、手に付着したピロリ菌が口に入るケースも多いためです。特に食事前やトイレ利用後には必ず手洗いを行いましょう。
ただし、手洗いといっても適当な方法ではなく、ソープや石鹸を使い手をこすったり、水で十分に洗い流すといった正しい手洗い方法を実践することが重要です。また、手指の爪の間や手の甲、指の付け根など、細菌が溜まりやすい部分を特に丁寧に洗いましょう。
7.3. 定期的な健康診断
最後に、「定期的な健康診断」も大切な予防法となります。ピロリ菌の感染に気づくためには、定期的に健康診断を受けることが必要不可欠です。特に胃の症状に異常がある場合、直ちに医療機関にて検査を受けましょう。
また、感染していないかどうかを確認するためにも、胃カメラ検査や呼気テストを受けることをおすすめします。特に、年齢によるリスクもありますので、中高年になったら一度はピロリ菌の検査を受けると良いでしょう。無理をせず、適度なペースで定期的な健康診断を受けることが、健康維持のカギとなります。
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